6.消費者にとってのブランディング

今回は、「ブランディングとは何か?」を消費者の視点からご紹介します。

繰り返しになりますが、消費者にとってブランドとは「識別」されている状態を指します。

ブランディングとは、消費者にどのように「識別」してもらうかを、企業が明確に定義すること。

明確に定義してもらうための「旗」が前回お話ししたブランド・アイデンティティです。
企業側が「どう思って欲しいか」がその中には端的に含まれていなければなりません。

それに対して、消費者が企業を「どう思うか」を「ブランド・イメージ」といいます。

ブランド・イメージは、消費者・顧客のココロ(心象)の中で生まれるということがポイントです。

たとえば「ユニクロ」を思い浮かべるとき、どのような印象が浮かびますでしょうか?
カジュアルファッションや家族のイメージ、またはグローバル企業として先進的な印象もあるかもしれません。

これらのイメージは、ユニクロというブランドが提供する機能的・非機能的要因を私たちが受けることで、形作られています。

ブランディングは、一言で表現してしまえば、企業の「こう思われたい」(ブランド・アイデンティティ)と、消費者の「こう思う」(ブランド・イメージ)を一致させる活動なのです。

そして、そのために第2回の時に触れた「刺激の設計」がとても大切になってきます。

<まとめ>
■消費者が企業のことを「どう思うか」を「ブランド・イメージ」という
■ブランド・イメージはココロの中で形作られる
■ブランディングとは企業の「こう思われたい」と消費者の「こう思う」を一致させる活動

次回は一体ブランディングをすることによってどういうメリットがあるのか?を具体的にご紹介します。

5.ブランディング最初のステップ ブランド・アイデンティティ

前回は、消費者がブランドを認知する際の種類「ブランド再認」と「ブランド再生」についてお話しました。

今回からは、企業がブランディングをするにあたって最も根本的な問いである、ブランディングとは何か?がテーマです。

これまでのお話の中で、ブランドとは識別であること、消費者の「心のイメージ」に対してアプローチしていくことなどに触れてきました。

ブランディングとは、消費者に対して何らかの識別をしてもらうための取組み全般を指しますが、そのためには、「どんな消費者に?」「どのように?」を、企業側が明確に定義する必要があります。

ブランディングをしていくときには、まずどんな消費者に届けたいのかの「旗」を立てます。

それが「ブランド・アイデンティティ」です。

とても大切なポイントですので、ブランド・アイデンティティとは何かは記憶してしまいましょう。

<ブランド・アイデンティティとは>
企業が自社の製品・サービスが競合他社の製品・サービスとどこが違うかを明確に示すもの。
※言い換えれば、企業が消費者・顧客にその製品・サービスを「どう思ってほしいか」のこと。
「消費者・顧客がどう思うか」というのは「消費者・顧客がどこが違うと思うか」ということであるが、購買行動に繋げるためには競合製品・サービスとの差異が消費者・顧客にとって意味あるものである必要がある。
つまり、差別化ポイントはニーズと連結している必要がある。

※ブランド・マネージャー認定協会より抜粋

ブランド・アイデンティティは、できるだけわかりやすく、言葉にして20文字以内で表現でき、社内で共有できることが大切です。
また、下記の問いに応えられるものでなければなりません。


1)競合他社の製品・サービスとどこが違うのか?


2)消費者はだれか?


3)消費者が自社に期待することが入っているか?


4)自社が提供したい価値が含まれているか?

これらを含めて、企業側が消費者に「どう思ってほしいか」=「旗」を定義すること。
ブランディングをしていくときには、これを考えることがはじまりです。

参考までに、有名なブランドアイデンティティの例をご紹介します。

■マクドナルド
Favorite Place and Way to Eat
お客様お気に入りの場所と食べ方を提供する

「ハンバーガー」という言葉は出てきません。
国によって異なるメニューを出したり、子どもがマックのクルー体験ができる「マックアドベンチャー」やカフェを展開するのは「お気に入りの場所と食べ方」を提供していくためだということがわかります。

■スターバックス
Rewarding Everyday Moments
自分へのご褒美としての豊かな時間

「コーヒー」という言葉ではなく、「人」に焦点を当て、
毎日のご褒美の時間を提供することがスターバックスのブランド定義です。
家庭と職場以外の第3の場所を提供していることは有名ですね。

■ナイキ
Authentic Athletic Performance
アスリートに敬意を

ナイキは実際には一般の顧客が多いですが、クオリティは常に
アスリートのニーズを満たすものでなければならないということを表現しています。
CMをはじめとした販促も、アスリートにスポットを当てることで、少年やファンに夢を与えています。

ナイキのブランド・アイデンティティに関連して、一度アップル社を追われたスティーブ・ジョブス氏が1997年に復帰した際、ナイキのブランドについて語ったエピソードをご紹介します。

NIKEは靴を売る会社じゃない、アスリートに敬意を払っているんだ

彼らは靴を売っている。
でもNIKEのことを考える時、ただの靴店よりももっと何か大きなものを感じる。
NIKEは広告では決して製品について話さない。
エアソールについてなんか話さないし、どうしてNIKEのエアソールが、リーボックのエアソールよりもいいのかなんてことは絶対に話にださない。

NIKEの広告にあるものはなんだろう?
NIKEは偉大なアスリートたちを褒め称え、スポーツに敬意を払っている。
それこそが、NIKEがやっていることなんだ。

知名度や品質だけではなく、消費者の心理にアプローチすること、そのためにブランド・アイデンティティがどのような役割を果たしていくのがおわかりいただけましたでしょうか?

ブランディング最初のステップ ブランド・アイデンティティ


<まとめ>
■企業がブランディングをしていくときには「旗」=ブランド・アイデンティティを立てる
■ブランド・アイデンティティは競合・消費者・提供する価値が全て含まれている必要がある

4.消費者はどのようにブランドを認知するのか?

前回は、ブランドイメージを上げるためにどうするのか?というテーマで、刺激の設計に関する話をしました。
 
今回は消費者がどのようにブランドを認知していくのか?がテーマです。
 
ブランドとは、消費者に識別されている状態ですが、その中で、消費者がブランドを認知する方法は2種類あります。
 
例えば、このロゴを見たら、あなたはどのように思いますか?
https://matome.naver.jp/odai/2137410694138210401
 
誰もが知っているロゴマークですね。このマークを見たときに、この会社が何をしているか、かなり想像ができると思います。
 
この認知の仕方が、「ブランド再認」です。
企業が提供するブランド要素の力を借りて、私たち消費者がブランドを思い浮かべるという認知の方法です。
 
もうひとつ、例えば想像してみてください。
 
あなたは一人で街を歩いていて、とても時間がありません。
 
そんな中でお腹が空いてきました。そんなとき、どのようなお店が思い浮かびますか?
 
先ほどと同じブランドかもしれませんし、違うブランドかもしれません。
 
また、もし一人ではなく家族や友人と一緒に歩いているとすれば、また違うブランドを思い浮かべると思います。
 
この「特定のニーズに対して思い浮かべる」という認知の方法が「ブランド再生」です。
ブランド要素の助けを何も借りずに、消費者の心の中での記憶とブランドが結びつくことです。
 
もちろん「ブランド再生」の方が消費者の認知のレベルとしては高いため、企業は消費者の心の中で思い出してもらう、「ブランド再生」を目指していくことが大切です。
 
それでは、このような認知をふまえて、企業はどのような取り組み方をすれば良いでしょうか。
 
「ブランド再認」には刺激の量、「ブランド再生」のためには刺激の質が大切です。

企業が認知をしてもらうためには、ブランド再認のための刺激を提供していきながら、「特定のニーズ」というものを常に意識して、質・量ともに最適な、刺激の設計をしていく必要があるのです。
 
消費者はどのようにブランドを認知するのか。ブランド再認とブランド再生

<まとめ>
■消費者がブランドを認知する方法には「ブランド再認」と「ブランド再生」の2種類がある
■「ブランド再認」を起こすには刺激の量、「ブランド再生」を起こすには刺激の質が大切

3.ブランドイメージを上げるための「刺激の設計」

第2回目の前回は、ブランドイメージについてお話をしました。
今回はブランドイメージを上げるためにどうするのか?についてお話したいと思います。

前回、

・ブランドは消費者の「心象」で創られる
・ブランドにはゼロ、プラス、マイナスがある
・ブランドは消費者に対してプラスのイメージで識別される必要がある

というお話をしました。

この中で「プラスのイメージで識別される」というためにやるべきことが「刺激の設計」です。

さて、ここで質問です。

一人で街を歩いている時に「お腹が空いたな」と思った時に、
どのお店を思い出すでしょうか?

あるいは、家族や友人と街を歩いているときに同じように
「お腹が空いたな」と思った時はどうでしょうか?

おそらく、一人の時とそうでない時、思い出すお店は違うはずです。

これは企業側がそれぞれのターゲットに対して異なる「刺激」を設計しているからです。

例えば牛丼チェーンであっても、「吉野家」はどちらかといえばおひとりさま向け、「すき家」は家族向けというイメージがないでしょうか?

私たちは日ごろ消費者としてどのような刺激を受けているのか、考えてみると新しい発見がありますよ。

なお、この「刺激」には2種類あります。

1)ブランド要素
その商品やサービスを象徴するサインのことです。

・ロゴ
・パッケージ
・色
・ジングル(音楽)
・キャラクター
・匂い
・ドメイン

2)ブランド体験
その商品やサービス体験そのもの、あるいはアフターサービスなどのことです。

ブランドをプラスにするには、適切なブランド要素とブランド体験をしっかりと設計しましょう。

<まとめ>
■ブランドをプラスにするには適切な刺激の設計が必要
■刺激にはブランド要素とブランド体験の2種類がある

2.ブランドにも「プラス」と「マイナス」がある

前回、「ブランド」とはどんな状態?」では

1)ブランドとは消費者起点の概念である
2)ブランドとは「識別」である

というお話をしました。

この中でまず意識していただきたいのは、「消費者が識別しない限りはブランドではない」ということです。

「消費者が識別していない状態」のことを「ブランド・ゼロ」と表現します。

私たちはここから消費者へ訴えかけて、ブランドとして識別してもらえるようにしていく必要があります。
識別してもらうということは、認知されるということでもあります。
つまり、消費者の「心象」、心のイメージに対してアプローチをしていく必要があります。

このために私たちがしなければならないのは「刺激の設計」ですが、それについては次回お話をします。

識別をしてもらうための方法はいくつかありますが、ここで質問です。

昨年ニュースをにぎわせた大手広告代理店の過重労働の件は、覚えている方も多いことと思います。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/09/22/dentsu_a_23218906/

このニュースを見たとき、あなたはどのように感じたでしょうか?

「やはり広告代理店は厳しいものだ」
「この会社には入りたくない」

など、様々な印象を持たれたと思いますが、総じてこの企業のサービスに否定的なイメージを持たれた方が多いのではないでしょうか。

ブランドとは識別という話をしましたが、この場合、ブランドマイナスとして識別されているという事になります。

反対に、東日本大震災の時に通信会社の社長が個人として100億円を寄付したことは、おおむね好意的に捉えられたのではないかと思います。
(サイト上で使途が公開されています)
https://www.softbank.jp/donations/?page=list_son.html

この状態は、ブランドプラスであるといえます。

つまり、私たち企業は消費者に識別される必要がありますが、あくまでブランド・プラスとして識別される必要があるということです。

最近では炎上マーケティングなど、ネット上で話題になることだけを狙った手法もありますが、ブランドプラス/マイナスの観点から考えると、危険な手法であるといえます。

<まとめ>
■ブランドは消費者の「心象」で創られる
■ブランドにはゼロ、プラス、マイナスがある
■ブランドは消費者に対してプラスのイメージで識別される必要がある

1.「ブランド」とはどんな状態?

私たちは中小企業のブランディングを主な仕事とさせていただいていますが、その際にブランディング、あるいはブランドの定義がお互いで異なるこ
とが良くあります。

マーケティングと混同される場合もありますし、デザインのことだと思われる方もいます。
ブランディングは、わかっているようで意外に曖昧な概念ではないでしょうか。

そこで、これから何回かに分けて、私たちが考えるブランディングの概念について説明したいと思います。

第1回「ブランド」とはどんな状態?

さて、「ブランド」といえば何を思い浮かべるでしょうか?

「ルイ・ヴィトン」のような高級ブランドを思い浮かべる人もいると思います。
反面、「ユニクロ」も日本のカジュアルウェアでは立派なブランドだと考える人もいるでしょう。
何となくアパレルブランド全体のイメージもあるかもしれません。

そこで、まずこちらのアドレスを見てみてください。

<会社・企業のロゴ一覧>
https://logostock.jp/corpcatalog/

このロゴの一覧を見て、どの企業やサービスかすぐにわかりますでしょうか。
意外にわかるものは少ないかもしれません。

次にこちらを見てください。

<有名企業ロゴ一覧>
http://fanblogs.jp/designtaro/category_1/

有名企業というだけあって知っているロゴが多いのではないでしょうか。

この「わかっている状態」が、「ブランドである」という状態です。

もう少し詳しく表現すると、ブランドであるとは「他と識別されている状態」のことです。

ブランドであるとは「他と識別されている状態」

例えばマクドナルドのロゴを見てそれが分かった場合は、どんなサービスを提供しているか連想できることがほとんどだと思います。

また、後の回でも詳しく述べますが、「お腹が空いた」という時に「マクドナルド」を想起するように識別されているということも、ブランドである
ということができます。

逆に言えば、私たち消費者から見て、ロゴを見ても商品やサービスを見ても想像ができない場合、その企業やサービスは「ブランドではない」あるい
は「ブランド・ゼロ」ということになります。

<まとめ>
■ブランドとは消費者起点の概念である■
■ブランドとは「識別されている状態」である■

京野菜とジビエの町家レストラン「むすびの」

当社が出資する子会社「むすびの」レストランが2016年11月17日にオープンしました。

http://musubino-kyoto.co.jp/

og_image

「中小企業の企画部を代行する」というミッションを持つ私たちにとって、この「むすびの」はとても重要な事業です。

現在年々市場が拡大しているネットマーケティング市場は歴史上これまでにないレッドオーシャンでもあります。例えば最近あったDeNAをはじめとするキュレーションサイト問題は、検索エンジンの特性を利用し資源や物量に任せる戦術が一定の効果を生むことを表しています。
良く言えば中小でも参画できる市場ですが、戦略的な視点がなければ大手の物量に負けてしまうため成功できない、という厳しい市場でもあります。

それでは、中長期的な成功を掴むための「戦略」とは何か。この答が私たちが今「むすびの」で行っている「ブランディング」です。

「むすびの」を立ち上げる時に私たちは会議を繰り返し、3C分析から始まり、どのようなターゲット(ペルソナ)にどのようなサービスを提供するのか、そしてどのようなストーリーを伝えるのか、行動規定(すべきこと、してはいけないこと)を吟味していきました。その時にまとめたBI(ブランド・アイデンティティ)は一つの冊子にまとめ、関係者すべてに共有しました。

「京農家の物語を伝えたくなる店」

これがむすびののブランド・アイデンティティです。

このブランド・アイデンティティを徹底しながらネットを活用していくことで、物量に頼らない「中小企業だからこそできるマーケティング戦略」が実現できるのではないかと考えています。

まだまだ課題は多いですが、ひとつひとつ着実に行い事例を作り、様々なお客様にこの取り組みを展開していきたいと思います。

アメーバ経営による経営者意識を持った人材の育成

アメーバ経営の導入目的は、下記の3つがあります。

1.市場に直結した部門別採算制度の確立
2.経営者意識を持った人材の育成
3.全員参加経営の実現

今回はこの中で「2.経営者意識を持った人材の育成」について考えてみたいと思います。

ここで考える「経営者意識」とは一体何でしょうか。私個人の見解としては、「組織全体のヒト・モノ・カネ・ツールに対する責任を持った決断ができる」ということになると考えています。

ご存知の通り、特に個人のスキルや資質に依存する中小企業において、こういった人材を育成することは非常に難しいのが実情です。トップ自身が日常の業務に忙殺されマネジメントができないこと、掛け持ち業務が多くなりプレイングマネージャーが一般的になることなど、多くの原因があると考えられます。

「一人の社員として経営者意識を持つことは不可能であり、かつその方が双方幸せではないか」
これは私のここ数年の実感であり、顧客企業における現実でした。

しかし、このアメーバ経営は部門別採算制度という形をとりながら、人間の可能性を追求する要素を含んでおり、経営者意識を持つうえでの「仕組み化」が非常に合理的にできているシステムであると感じています。

アメーバ経営は必要に応じて小さなユニットに配分し独立採算することでそれぞれのアメーバを中小企業の経営者のようにするシステムですが、実際的な中小企業経営者の大きな課題は人の管理であり、そこに費やされる労力は精神的にも非常に大きいものだと思います

その点について、独立採算の中で(少なくとも時間当たり採算上は)人件費や個人単位の成果を考慮に入れないのは「売上最大・経費最小」に注力していく時にとても合理的です。
部門別採算制度におけるリーダーは、人材に関する悩みが少なくとも実際の経営よりも軽く感じる、すなわち本業の採算に集中できるという点は大きなメリットだと思われます。

その上で、リーダーは本業(アメーバ単位)の損益をより良くするための決断を繰り返して成長していく、それが経営者意識を高めることなのではないでしょうか。

また、経営者意識と京セラフィロソフィの関係についても非常に密接なものがありますが、それについては次回に考えてみたいと思います。

アメーバ経営は経営者の意志を体現する仕組み~テスト運用に触れて~

2016年2月から、アメーバ経営の伝票を利用した社内のテスト運用がはじまりました。

昨年10月からスタートし、概念の理解やビジネス形態、運用ルールを一通り検討した上での実地運用となりますが、実際にはじめてみるとやはり大きな気づきや課題が出てきます。

これらの課題をどのように建設的に解決していくかが今後の大きなテーマですが、現時点で私が気が付いたこれまでの一般的な単品管理システムとの違いを挙げておきます。

(1)営業は案件ごとの「粗利」を追わない仕組み
これまでの単品管理システムにおいては、1案件ごとの「受注」と「仕入れ」を営業自身が明確に把握し、書面でも「受注」と「仕入れ」は一つのものでした。
アメーバ経営の伝票運用ルールにおいては、この「受注」と「仕入れ」が明確に分かれます。
例えば、Webサイト制作の案件であれば、営業は(少なくとも理論上は)受注時の仕入れを意識することなく、製造から上がってきた見積もりを提出する形になります。
『受注は営業』『仕入れ・生産は製造』という役割分担が、伝票上も非常に明確なのです。
このことで、営業は受注活動に専念する、という仕組み上の特徴が出てくることになります。

また、伝票上においても、受注と仕入れを明確に紐つけるコードが実は存在せず、必要に応じて備考欄に記入をする、という形になります。グループ全体としての「売上最大、経費最小」を追求するという思想であり、そこから単品での受注と仕入れの関係は、経営管理実績においては明確にとらえない、という特徴も出てきます。

この点は実際にはまだ最終的な月次実績や経営会議までのフローを行っているわけではないため、異なる点もあるかもしれません。引き続き運用していき確認していきたいと思います。

(2)機能別に伝票を分け、伝票に人が付く仕組み
先ほどの特徴と一部重複しますが、あくまで伝票が基本となり、そこに人が付く仕組みであることがアメーバ経営の大きな特徴であるように思います。
重ねてWebサイト制作の案件を例に出すと、例えば制作の見積もり依頼があった場合の流れは、下記のようになります。

1.<製造>にて【見積書】を作成→<営業>に提出
2.<営業>からお客様に【見積書】を提出
3.お客様から<営業>に対して発注→【注文書】受領
4.<営業>が【注文書】をもとに社内向け【受注伝票】を作成し、<経営管理>が承認
5.<経営管理>の承認により、<製造>が業務スタート

現実的には一定規模の企業以上であれば、営業が見積もり窓口に立つフロー自体は珍しくないと思われますが、このフローで基本となるのは、あくまでも伝票であり、経営管理の承認であることがわかります。また、受注に関わる全ての業務を営業が行うことにより、これもまた伝票により受注は営業が行い、製造は制作物の品質を高めるという機能が明確になります。機能ごとに伝票が分かれるイメージです。

(3)経営者の意思により、姿を自由に変えられる仕組み
アメーバ経営の真骨頂はもしかしたらここにあるのかもしれないと個人的には思います。このアメーバ経営という仕組みは目的や伝票ルールは明確に決まっていますが、その中での経営者の裁量が非常に大きいことが学習を進めるにつれてわかってきました。

例えば運用ルールの中で、実際のフローと合わないなどの課題が出てきた場合に、問いとなるのは、「経営者自体がこの会社をどのようにしたいのか?」ということです。企業全体の未来を考えたときに、製造部にこの業務をさせるのか、営業部にさせるのか。それによって企業としてのノウハウの蓄積もかなり変わります。

例えば、当社の場合はラベル・パッケージデザインやCI・ブランディングなど、クリエイティブなスキルのノウハウを蓄積する、ということを経営上の大きな目的としています。したがって業務フローでは企画や工程管理に関わる全てについて、特定のグループが携わる運用ルールを設定しています。あらゆるクリエイティブな仕事に携わることで、このグループは大きなノウハウを蓄積することができるのです。

また、これらの経営者の意志を非常に合理的に仕組みとして落とし込める点も重要な点だと思われます。通常、経営者の意志をトップダウンで表現したとしても上意下達でしかなく自発的な動きにはなりにくいものです。
アメーバ経営の場合はそれが仕組みとして確立されるため、社員自身が自律性を持って動きやすいという点があります。

ただし、これは経営者が自由にできる、という意味ではありません。あくまで経営者が会社の方向性に合わせて仕組みを作ることができる、という点に留意する必要があります。経営者が決めた仕組みに、経営者自身も従わなければならないのです。その意味では、経営者自身も自らを律する心が求められることだろうと思います。

テスト運用をはじめてまだ2週間足らずのため、これからも新たな課題が出てくるであることは想像に難くありませんが、ひとつひとつ解決していきオリジナルの経営管理システムとして習得したいと思います。

2016年アメーバ経営導入に当たり

現在社内にてアメーバ経営の導入を進めており、2016年より本格導入される見込みになっています。

アメーバ経営は京セラ創業者である稲盛和夫氏が開発した、いわゆる部門別採算制度をよりシンプルかつ効果的にしたもので、各リーダーがリアルタイムに部門の経営状況を把握できる経営管理システムです。現在勉強会などで理解を深めていますが、非常に良くできているものだと実感しています。社内売買、時間売など部門別採算性のシステム面はもちろんですが、「なぜそのような仕組みになっているか」を考えたときに、その仕組みが画期的であることに気が付きます。

具体的には、例えば最初に自社の事業がどの事業なのかを分類し、そのタイプに合わせてどの部署が売上に責任を持つのかが変わってくる点があります。営業だけではなく、コンサル部署を含めた製造も売上に対する責任を持ちます。「全員参加経営」を実践するという目的が、非常に明確なのです。

ただし、これには弊害もあります。全ての部署が売上に責任を持つということは、状況によっては部門間の折衝や対立が生まれることを意味します。部署の状況を見ながら、全社的視点を持つことがアメーバリーダーには強く求められるのです。現実的にはそういったパーソナリティを持ちきれない状況もあることだと思われます。

勉強会でもよく説かれる点に、「ルールをルールとして決めすぎないで欲しい。全ては部署間のコミュニケーションである」ということがあります。
導入に当たっては前提として、また継続的に部署間の連携がしっかりとれていることが重要で、そのためにはシステム以前の哲学やコミュニケーション品質の向上が求められます。

2016年の導入に当たってはその点に最大限留意して、具体的な業務フローに落とし込んで経営管理システムの確立に動いていきたいと思います。