京野菜とジビエの町家レストラン「むすびの」

当社が出資する子会社「むすびの」レストランが2016年11月17日にオープンしました。

//musubino-kyoto.co.jp/

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「中小企業の企画部を代行する」というミッションを持つ私たちにとって、この「むすびの」はとても重要な事業です。

現在年々市場が拡大しているネットマーケティング市場は歴史上これまでにないレッドオーシャンでもあります。例えば最近あったDeNAをはじめとするキュレーションサイト問題は、検索エンジンの特性を利用し資源や物量に任せる戦術が一定の効果を生むことを表しています。
良く言えば中小でも参画できる市場ですが、戦略的な視点がなければ大手の物量に負けてしまうため成功できない、という厳しい市場でもあります。

それでは、中長期的な成功を掴むための「戦略」とは何か。この答が私たちが今「むすびの」で行っている「ブランディング」です。

「むすびの」を立ち上げる時に私たちは会議を繰り返し、3C分析から始まり、どのようなターゲット(ペルソナ)にどのようなサービスを提供するのか、そしてどのようなストーリーを伝えるのか、行動規定(すべきこと、してはいけないこと)を吟味していきました。その時にまとめたBI(ブランド・アイデンティティ)は一つの冊子にまとめ、関係者すべてに共有しました。

「京農家の物語を伝えたくなる店」

これがむすびののブランド・アイデンティティです。

このブランド・アイデンティティを徹底しながらネットを活用していくことで、物量に頼らない「中小企業だからこそできるマーケティング戦略」が実現できるのではないかと考えています。

まだまだ課題は多いですが、ひとつひとつ着実に行い事例を作り、様々なお客様にこの取り組みを展開していきたいと思います。

アメーバ経営による経営者意識を持った人材の育成

アメーバ経営の導入目的は、下記の3つがあります。

1.市場に直結した部門別採算制度の確立
2.経営者意識を持った人材の育成
3.全員参加経営の実現

今回はこの中で「2.経営者意識を持った人材の育成」について考えてみたいと思います。

ここで考える「経営者意識」とは一体何でしょうか。私個人の見解としては、「組織全体のヒト・モノ・カネ・ツールに対する責任を持った決断ができる」ということになると考えています。

ご存知の通り、特に個人のスキルや資質に依存する中小企業において、こういった人材を育成することは非常に難しいのが実情です。トップ自身が日常の業務に忙殺されマネジメントができないこと、掛け持ち業務が多くなりプレイングマネージャーが一般的になることなど、多くの原因があると考えられます。

「一人の社員として経営者意識を持つことは不可能であり、かつその方が双方幸せではないか」
これは私のここ数年の実感であり、顧客企業における現実でした。

しかし、このアメーバ経営は部門別採算制度という形をとりながら、人間の可能性を追求する要素を含んでおり、経営者意識を持つうえでの「仕組み化」が非常に合理的にできているシステムであると感じています。

アメーバ経営は必要に応じて小さなユニットに配分し独立採算することでそれぞれのアメーバを中小企業の経営者のようにするシステムですが、実際的な中小企業経営者の大きな課題は人の管理であり、そこに費やされる労力は精神的にも非常に大きいものだと思います

その点について、独立採算の中で(少なくとも時間当たり採算上は)人件費や個人単位の成果を考慮に入れないのは「売上最大・経費最小」に注力していく時にとても合理的です。
部門別採算制度におけるリーダーは、人材に関する悩みが少なくとも実際の経営よりも軽く感じる、すなわち本業の採算に集中できるという点は大きなメリットだと思われます。

その上で、リーダーは本業(アメーバ単位)の損益をより良くするための決断を繰り返して成長していく、それが経営者意識を高めることなのではないでしょうか。

また、経営者意識と京セラフィロソフィの関係についても非常に密接なものがありますが、それについては次回に考えてみたいと思います。

アメーバ経営は経営者の意志を体現する仕組み~テスト運用に触れて~

2016年2月から、アメーバ経営の伝票を利用した社内のテスト運用がはじまりました。

昨年10月からスタートし、概念の理解やビジネス形態、運用ルールを一通り検討した上での実地運用となりますが、実際にはじめてみるとやはり大きな気づきや課題が出てきます。

これらの課題をどのように建設的に解決していくかが今後の大きなテーマですが、現時点で私が気が付いたこれまでの一般的な単品管理システムとの違いを挙げておきます。

(1)営業は案件ごとの「粗利」を追わない仕組み
これまでの単品管理システムにおいては、1案件ごとの「受注」と「仕入れ」を営業自身が明確に把握し、書面でも「受注」と「仕入れ」は一つのものでした。
アメーバ経営の伝票運用ルールにおいては、この「受注」と「仕入れ」が明確に分かれます。
例えば、Webサイト制作の案件であれば、営業は(少なくとも理論上は)受注時の仕入れを意識することなく、製造から上がってきた見積もりを提出する形になります。
『受注は営業』『仕入れ・生産は製造』という役割分担が、伝票上も非常に明確なのです。
このことで、営業は受注活動に専念する、という仕組み上の特徴が出てくることになります。

また、伝票上においても、受注と仕入れを明確に紐つけるコードが実は存在せず、必要に応じて備考欄に記入をする、という形になります。グループ全体としての「売上最大、経費最小」を追求するという思想であり、そこから単品での受注と仕入れの関係は、経営管理実績においては明確にとらえない、という特徴も出てきます。

この点は実際にはまだ最終的な月次実績や経営会議までのフローを行っているわけではないため、異なる点もあるかもしれません。引き続き運用していき確認していきたいと思います。

(2)機能別に伝票を分け、伝票に人が付く仕組み
先ほどの特徴と一部重複しますが、あくまで伝票が基本となり、そこに人が付く仕組みであることがアメーバ経営の大きな特徴であるように思います。
重ねてWebサイト制作の案件を例に出すと、例えば制作の見積もり依頼があった場合の流れは、下記のようになります。

1.<製造>にて【見積書】を作成→<営業>に提出
2.<営業>からお客様に【見積書】を提出
3.お客様から<営業>に対して発注→【注文書】受領
4.<営業>が【注文書】をもとに社内向け【受注伝票】を作成し、<経営管理>が承認
5.<経営管理>の承認により、<製造>が業務スタート

現実的には一定規模の企業以上であれば、営業が見積もり窓口に立つフロー自体は珍しくないと思われますが、このフローで基本となるのは、あくまでも伝票であり、経営管理の承認であることがわかります。また、受注に関わる全ての業務を営業が行うことにより、これもまた伝票により受注は営業が行い、製造は制作物の品質を高めるという機能が明確になります。機能ごとに伝票が分かれるイメージです。

(3)経営者の意思により、姿を自由に変えられる仕組み
アメーバ経営の真骨頂はもしかしたらここにあるのかもしれないと個人的には思います。このアメーバ経営という仕組みは目的や伝票ルールは明確に決まっていますが、その中での経営者の裁量が非常に大きいことが学習を進めるにつれてわかってきました。

例えば運用ルールの中で、実際のフローと合わないなどの課題が出てきた場合に、問いとなるのは、「経営者自体がこの会社をどのようにしたいのか?」ということです。企業全体の未来を考えたときに、製造部にこの業務をさせるのか、営業部にさせるのか。それによって企業としてのノウハウの蓄積もかなり変わります。

例えば、当社の場合はラベル・パッケージデザインやCI・ブランディングなど、クリエイティブなスキルのノウハウを蓄積する、ということを経営上の大きな目的としています。したがって業務フローでは企画や工程管理に関わる全てについて、特定のグループが携わる運用ルールを設定しています。あらゆるクリエイティブな仕事に携わることで、このグループは大きなノウハウを蓄積することができるのです。

また、これらの経営者の意志を非常に合理的に仕組みとして落とし込める点も重要な点だと思われます。通常、経営者の意志をトップダウンで表現したとしても上意下達でしかなく自発的な動きにはなりにくいものです。
アメーバ経営の場合はそれが仕組みとして確立されるため、社員自身が自律性を持って動きやすいという点があります。

ただし、これは経営者が自由にできる、という意味ではありません。あくまで経営者が会社の方向性に合わせて仕組みを作ることができる、という点に留意する必要があります。経営者が決めた仕組みに、経営者自身も従わなければならないのです。その意味では、経営者自身も自らを律する心が求められることだろうと思います。

テスト運用をはじめてまだ2週間足らずのため、これからも新たな課題が出てくるであることは想像に難くありませんが、ひとつひとつ解決していきオリジナルの経営管理システムとして習得したいと思います。

2016年アメーバ経営導入に当たり

現在社内にてアメーバ経営の導入を進めており、2016年より本格導入される見込みになっています。

アメーバ経営は京セラ創業者である稲盛和夫氏が開発した、いわゆる部門別採算制度をよりシンプルかつ効果的にしたもので、各リーダーがリアルタイムに部門の経営状況を把握できる経営管理システムです。現在勉強会などで理解を深めていますが、非常に良くできているものだと実感しています。社内売買、時間売など部門別採算性のシステム面はもちろんですが、「なぜそのような仕組みになっているか」を考えたときに、その仕組みが画期的であることに気が付きます。

具体的には、例えば最初に自社の事業がどの事業なのかを分類し、そのタイプに合わせてどの部署が売上に責任を持つのかが変わってくる点があります。営業だけではなく、コンサル部署を含めた製造も売上に対する責任を持ちます。「全員参加経営」を実践するという目的が、非常に明確なのです。

ただし、これには弊害もあります。全ての部署が売上に責任を持つということは、状況によっては部門間の折衝や対立が生まれることを意味します。部署の状況を見ながら、全社的視点を持つことがアメーバリーダーには強く求められるのです。現実的にはそういったパーソナリティを持ちきれない状況もあることだと思われます。

勉強会でもよく説かれる点に、「ルールをルールとして決めすぎないで欲しい。全ては部署間のコミュニケーションである」ということがあります。
導入に当たっては前提として、また継続的に部署間の連携がしっかりとれていることが重要で、そのためにはシステム以前の哲学やコミュニケーション品質の向上が求められます。

2016年の導入に当たってはその点に最大限留意して、具体的な業務フローに落とし込んで経営管理システムの確立に動いていきたいと思います。

コンサル部門として再出発する運びとなりました。

この度、私はシュンビン株式会社とともに事業を行うこととなり、平成27年10月1日よりシュンビン株式会社のコンサル部門として新たな出発をする運びとなりました。

これまで独立して事業を行ってきましたが、今回の件により、私がこれまで蓄積してきたIT分野の企画提案・マーケティング力にシュンビン株式会社のダイレクトマーケティング他、総合力が加わるものであり、これまで以上のサービスの向上につながるものだと考えています。

これを機に新たな決意をもってサービス向上に取り組んでまいりますので、何卒、これまでと変わらぬご愛顧をシュンビン株式会社に賜りますようお願い申し上げます。

『第13回 オウンドメディア研究会 オープンセミナー』に登壇させていただきました。

2015年7月8日(水)にデジタルハリウッド大阪校にて開催されたオープンセミナー「前略、中小規模BtoB企業さま ホームページをもっと有効に活用したい!とお考えの方」第2部にて登壇させていただきました。

セミナーでは、これまでのWeb事業運営支援の立場から見える顧客企業の共通課題をケーススタディで紹介しつつ、Web運用における体制の重要性などをご紹介させていただきました。

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『オウンドメディア研究会 研究報告書1』が出版されました

デジタルハリウッド大学院を拠点として活動し、私も研究員として参加させていただいている「オウンドメディア研究会」の研究成果が、この程中途報告として出版され、私も第1章・第3部で執筆をさせていただきました。

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「オウンドメディア研究会」は、メディアを持つことができるようになった中小企業にとってより重要な存在になるであろう「メディア・マネージャー」の育成を目的とし、現在企業でメディアマネージャーやWeb担当者として活躍している方、Webディレクターとして案件管理に携わる方、広告制作会社などが参加している有志の研究会です。

私の立場から申し上げると、中小企業にとって最も重要といっても過言ではないWeb展開について、様々な理由から力を入れられていないケースが散見されています。そのために私のような支援者が存在するわけですが、本来的にはより高次の販促やブランディングができる可能性がありながら、メディア・マネージャーの不在により実現できていないケースが多くあります。

現在デザインMBAなどの資格はありますが、メディアに関する統合されたカリキュラムは存在しません。本研究会がメディア・マネージャーの育成につながり、日本の9割以上を占める中小企業にとってより良いブランディング活動ができるようなればと思い、参加・研究を続けていこうと考えています。

書籍はAmazonで購入いただけます。
実際に出版されたものを見ると、途中報告だけに色々と気になる点があります。次回出版される際には修正し、内容がよりわかりやすく伝わるよう、努力したいと思います。

Surface Pro3 のメリット・デメリット

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今年の1月から外での作業環境をレッツノート CF-W7からSurface Pro3に変更しました。

元々使っていたレッツノートは2008年ごろに購入したものをメモリ増設したり、HDDをSSDにしたりとバージョンアップを図ってきており、動作自体には全く問題はありませんでした。SSDのスピード感は古いPCに対しても本当に効果的なものだと驚愕したものです。

ただし、それでも根本的な解像度の問題があり、ノートPCの標準解像度が横1280pxになる中、1024pxの解像度だけはどうしてもストレスになっていました。
※顧客先で自身の成果物をプレゼンする際に画面を縮小しなければならないのは少々辛いものです。

また、CPUの面でも最新のAdobeアプリケーションを動作させる際の不安が常に付きまとっており、特にPhotoshopやFirrewoksでの作業時には著しく動作が不安定になっていました。

それらの理由から約7年ぶりに外出用PCを買い替えたのですが、今回Surface Pro3にしたことによるメリットを大きく上げると下記になります。

 

(1)画面解像度の向上による検証効率のアップ

レッツノートCF-W7の解像度は1024px×768pxであるのに対して、Surface Pro3の解像度は2160×1440pxになります。
Dream weaverなどのワークスペースが広くなったことはもちろん、タッチスクロールで確認していけるため、Webサイトの検証効率が特に向上しました。

(2)タッチタイプによる画面設計作業の作業効率アップ

ExcelやPowerPointでの作業でタッチタイプを利用することにより、画面要素を定義するワイヤーフレームがより直感的に作成できるようになりました。
ワイヤーフレームというと、どうしても直線的なイメージで作成せざるを得ず、かつこの作業に一定の時間を要するのですが、反復作業時のストレスが軽減されることで、コンテンツ構成やライティングにより重点を置くことができるようになりました。

また、Google Analyticsによる解析作業時も、様々な絞り込みを仮説的に幅広く行っていくのですが、その選択/絞り込みのチェックを直感的に行っていける点でアウトプットの質向上にも貢献しています。

 

(3)顧客へのプレゼン時に効果的な情報共有が可能

これまでのノートPCの場合、どうしてもノートPCを中心としたディスプレイエリアは「パーソナルスペース」であったため、画面自体を会議内で共有することには限界がありました。
(人のパソコンのキーボードをちょっと貸してください、と取るのは抵抗があると思います)
Surface Pro3の場合はキックスタンドで立ち上げたり、キーボードの取り外しをすることにより、画面を共有し触っていただきながら直感的に打ち合わせを進めていくことができます。
顧客から見ても、ストレスなく自身の要望を伝えることができるのは嬉しいものではないでしょうか。

その他、端末自体の軽さ(800g)やSurface ペンとOne Noteの連携などのメリットはありますが、個人的には微細なものだと感じています。

大きなメリットとしては、やはり仕事において
「直感的な作業が可能」である
「情報共有が容易」である点
がとても大事だと感じています。

もうひとつ大きく重視する点として、「頑丈である」ということがあるのですが、こればかりは長期間使ってみないとわからないため、しばらく後にレビューしたいと思います。
※レッツノートCF-W7は約7年利用しましたが、その間1度も故障はありませんでした。レッツノートがSurfaceのようなコンセプトの端末を早期に発売してくれることを望みます。

逆にデメリットとしては、
(1)wifi環境がつながりにくい場合がある
(2)Officeのインストールができずに大変困る場合がある
という点があります。
(2)についてはネットで探しても情報が見つからなかったので、次回に参考までに私がどのように解決したのかをお伝えしていきたいと思います。

イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる

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国立新美術館で開催されている「イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる」を鑑賞してきました。
「イメージ」というと様々な捉え方がありますが、私個人としては「象徴」もしくは「象徴的思考」だと考えています。
人類が誕生して20万年と言われていますが、その大半のほとんどの歴史、19万年以上において、文字は残っていません。
現在わかっている範囲では、人類が何かをものそのものとしてではなく、イメージとして利用した史跡は約7万5000年前ということです。
イメージは、約6万5000年以上にわたって利用し、人類が研ぎ澄ませてきた根源的な力だと言えるのではないでしょうか。

本展では、人類が長年にわたって生み出してきたイメージをテーマごとに展示しています。

■エントランス:イメージとは何か
会場に入るとまず出てくるのは神像付の椅子、「カワ・トゥギトゥ」。パプアニューギニアのものとのことです。
イメージというものを感覚で理解するにはまさにうってつけといえるでしょう。ポスターの表紙を飾るのも納得です。
おそらく祭事に利用されていたのではないかと思われますが、当時の人々はこの作品を神そのものとして崇拝していたのでしょうか。

 

■仮面
円形の一つの部屋の壁一面に並ぶ、世界中から集められた仮面、仮面。
それぞれの造形は大きく異なりますが、どことなく統一感を感じることが不思議です。
全体を見た後でひとつひとつの仮面を見ていくと、当時の人々がその仮面を通じて描いた本質が、おぼろげに浮かんでくるのです。
インドの仮面は様々な色合いを使い豪奢に、おかめはふくよかな女性像、インドネシアの仮面は野性的な男性像など。

 

■神像
世界各地で造られた神像を展示するコーナーです。人はなぜ神を創ったのか。それが人間と似る形になったのはいつか。
それは人間が世界中に広がっていく過程と決して大きく関係しているのではないでしょうか。

人の数が増え、階層が生まれたからこそ絶対的な存在を創り、集団を統率していった歴史が若干ながら垣間見えるように思います。
同じ二本足ながら、例えばマレーシアであれば狩猟神、インドであれば商売の神と異なっているのは、それぞれの地域で重んじられている価値観が反映されているのでしょう。

 

■色
色は価値観や環境によって大きく捉え方が異なるものですが、人類が感じる根本的なイメージというものは共通しているのではないでしょうか。本展示を見ていくと、それが非常によく伝わります。
世界各国の展示から見られる、華やかな色や金属が放つ輝き。それらは身にまとう人をひとつ特別な存在として認識させたことでしょう。
赤・青・金銀。それらがもたらすイメージは、その土地だけではなく万国に通じるものなのでしょう。

 

■高さ
人はどうして高いものに羨望のまなざしを向けるのか。
ダイナミックな古来の展示は、高さを現世とは異なる世界への入口として考えていたようです。
ここで展示されているものは、主に葬儀や神の儀式で利用されたものばかりで、高さ約3メートル~4メートルもの建造物です。
オーストラリアと日本のものがありましたが、世界にはもっと多くのこういった史跡が残っているでしょう。

 

■現代
翻って現代は情報の流通が飛躍的に増大している時代です。イメージは複製され、大量生産され、そして消費されていきます。
本コーナーでは、世界中で生まれている価値観のミクスチャーにより生まれたイメージを紹介しています。
アフリカで造られたアメリカ車のイメージやバーバー(床屋)のイメージは、人類の社会情勢やニーズによりイメージの質も大きく変容していくことを物語っています。

 

■終わりに
最後に登場するのは私たち日本人にとってある意味身近な「網」や「熊手」が登場します。ただし、それらの「イメージとしての使い方」は大きく異なります。
中央に大きく登場する幅約3~4メートルの網は、網としてではなくその色合いと合わせて何か大きな威圧感を感じるイメージを伝えます。壁に大きく貼り付けられている熊手はやはり大きく牙を向いており、人の行動を監視しているようなイメージを与えます。人によって感じるイメージは様々ですが、そこには非日常と呼べる空間が形作られます。

 

人類が生み出してきた新たなイメージは、常に身近なものを新しい「非日常」視点で捉えなおすことで生まれてきたのではないか。
本展ではそのようなことを伝えたいのではないかと個人的には感じました。

 

またこういったテーマがあれば行きたいなぁ、と思っていたところ、
何と出品元は国立民族学博物館。大阪は万博公園にあるとのこと。京都からは車で約1時間。これは完全に失態でした。
外部に出品中の博物館が一体どのようなレイアウトになっているのかという興味もあるので、近いうちにぜひ行ってみたいと思います。

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うめきた未来会議MIQS(ミックス)

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3月22日、大阪梅田のナレッジキャピタルで開催された「うめきた未来会議MIQS(ミックス)」に参加しました。

MIQSは「日本のクリエイティブ」をテーマとして、ファッション、伝統芸能、漫画などさまざまなジャンルのクリエーターがプレゼンするイベントです。

それぞれの持ち時間は15分。短いとみることもできますが、その分コンパクトで凝縮された内容に感じました。

以下簡単な所感。

■ファッションジャーナリスト 生駒 芳子氏
「日本文化が世界を救う10個の宝」をテーマにプレゼン。
精神性からサービスに至る様々な日本的なものを「ディテールの美」と俯瞰的に解説しながら、現在の日本文化におけるブランディング要素の少なさに警鐘を鳴らしています。
「経済は文化の僕である」という言葉を引き合いに、日本文化を継承していくことの重要性を説きました。

■コルク代表 佐渡島 庸平氏
「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」「働きマン」などを送り出した敏腕編集者が「社会を編集する」というテーマでプレゼン。
現在手掛けている「インベスターZ」を例として、現在スマホやネットによって大きく変わりつつある産業構造に対する独自の考えを述べました。
「今世界は大きく変わりつつあり、この世界で新しいものを生み出していくためには1,000の仮説と失敗をしなければいけない。だから講談社をやめて小さい組織を作った」
という言葉が印象的でした。

■浪曲師 春野 恵子氏
現在伝統芸能として衰退をたどる浪曲の魅力、またクラウドファンディングにより世界へ発信する自身の取り組みをテーマにプレゼン。
和式ミュージカルとも呼ばれる浪曲の特徴を活かした英語化や現代シナリオ化など、現在のトレンドに受け入れられるような創意工夫を凝らしている点は、その他の衰退産業にも取り入れられるアプローチだと感じました。
また、クラウドファンディングという手法については、「普通にお金を集めるのではなく、社会的に注目していただく形でお金を集め、できるだけ多くの人に浪曲の魅力を知っていただくことに努めたかった」という言葉が印象的でした。

■華道「未小流笹岡」家元 笹岡 隆甫氏
「いけばなに未来はあるか」というテーマでのプレゼン。
笹岡氏が実現したい2つのこと、「東京五輪での花手前披露」と「いけばなの義務教育化」。特に2つ目は一見突拍子のないことに感じられてしまいましたが、いけばなの中に含まれる論理性と哲学、日本的な時間経過の概念などは、まさに今求められている持続可能なデザインの一つとして、多くの方が理解していくべきもののように感じられました。
語り口はとても静かでしたが、私個人として一番感銘を受けたプレゼンでした。

■京料理 木乃婦三代目若主人 高橋 拓児氏
「料理の科学的アプローチ」をテーマにプレゼン。
「調理場は実験室であり、お客様は被験者」、「料理人は研究者でありアスリート」など、言葉の再定義をとても魅力的に表現するプレゼン手法が印象的でした。
内容としても非常に面白く、料理人が極めるべき五感と空間の与える影響について、「経験と勘」だけではない科学的要素を含めてわかりやすく解説していました。
嗅覚(香り)は40万種に対して味覚は5種類しかないという点は、漠然とは知っていながら具体的に数値を知ると少々驚きがあります。
また、「空間の美」が交感神経による「興奮」が味覚を刺激するという点についてもなるほど、と思わせられるものがありました。

最後まで参加できなかったのですが、非常に刺激的な時間でした。
また機会があればそれぞれの方について、掘り下げたお話しをお伺いしたいと思います。