書評:京都が観光で滅びる日 – 日本を襲うオーバーツーリズムの脅威

「京都が観光で滅びる日」とは少々物騒ですが、この本におけるスペインやイタリアの事例を見てみると、京都市がまさにその始まりといってもいい状況になっていることがよくわかります。

京都への旅行客数はここ数年で年間5000万人を超えましたが、その中での増加はほぼインバウンドに集約され、なんと国内の旅行者はピーク時から比較して730万人減少しているというデータがあります。これを企業の売上として考えれば存亡の危機レベルといえます。
そんな中、本書では行政がインバウンドに向けた政策を強化し、ホテルや大企業を優先した景観条例の例外を乱発しているという状況が明らかにされています。

私自身も京都市に住んでいる身ですが、中心部における観光の優先度があまりに高く、ホテルや駐車場が乱立している状況はどうなのだろうかと感じています。 また、ここ5年間くらいでそのスピードがさらに増しており、国策とはいえ住民にとって魅力的なまちづくり、文化的なまちづくりの観点が後回しにされている危機感を覚えています。

著者である村山祥栄氏は京都市議会議員としての長い経験から、そういった地方行政の課題に向けてドラスティックながらも対案を出し、市民に新たな選択肢を提示しています。

行政、企業活動どちらにも共通して、昨今は短期的な利害を重視してしまう傾向が強くなっています。その中で先人が培った「国家100年の計」という考え方を、私たち一市民が思い出す必要があるのではないでしょうか。

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