書評:NLPの実践手法がわかる本


『NLPの実践手法がわかる本』

NLPとは何か?

NLPという言葉を聞いたことがない人もいることでしょう。
NLPとは「神経言語プログラミング」というもので、1970年代にアメリカで生まれた、言語学と心理学を組み合わせた実践手法です。

NLPはNeuro(神経) Linguistic(言語) Programming(プログラム)の略で、「神経」とは「五感」を表し、「五感」は体験が作り出すものとして定義します。

たとえばハンバーグを食べるという体験には「味」「におい」、焼けるときのにおいなどの感覚(五感)が伴うことでしょう。

NLPでは、人間は五感を通じて体験し、それを言語化することによって意味づけをし、行動を仕組化(プログラム化)すると考えます。

NLPが目指すもの

それでは、NLPは何を目指すものでしょうか。
NLPにおいては、人間は五感を通じて行動を仕組化(プログラム化)するということでした。私たちが、その行動の仕組みや反応を意識していなかったら、いったいどうなるでしょうか?

私たちの中には、建設的な影響を与える感覚・反応と、破壊的な影響を与える感覚・反応があります。
しかし、どちらについてもすべてを意識的にできているかといえば、そうではないと思います。

自分がなぜこのような行動をしているのか、わからないことはありませんか?
たとえば仕事でも、後から考えるとどうしてこんなことを疎かにしたんだろう、というトラブルがあります。
プライベートの日常でも、余計な一言や行動で、人を不快にさせることもあるでしょう。
ダイエット、禁酒、禁煙、生活習慣。
理屈ではわかっていても、なぜか続かない。そんな人も多いことと思います。

プログラムの特徴は、「刺激に対して反応する」ということです。

NLPが目指すものは、こういった人が普段意識していない五感と言語を意識化することで、脳内の破壊的なプログラムを排除し、よりよいコミュニケーションや人生を実現することなのです。

この本で得られるもの

「NLPの実践手法がわかる本」は、実践編ではありますが序盤にかなりNLPの概念的な説明がありますので、これ一冊でも基本的な理解が深まります。
ただし、中身は相応に濃いため、一読して理解できるというものでもない印象です。

その中でも実践手法の中で重要なスキルとなる「アソシエイト」と「ディソシエイト」については反芻・実践が必要だと感じました。

1)アソシエイト
自分の体験をまさに自分事として、身体全体で深く体験すること。
→好ましいプログラムを作るときに重要になる

2)ディソシエイト
自分の体験をまるで他人事のように観察すること。
→否定的なプログラムを解除するときに重要になる

NLPではこの2つの概念を行き来することで、自分の中の無意識を意識化し、変革していきます。とくに後半はかなり高度な内容になりますので、しっかりと時間を取って復習・実践をした方がよいかもしれません。

私個人としてはまず概念的な理解をしたかったため、後半の実践はそれ程できていませんが、内容には十分満足できました。

なりたい自分になる、ということ

NLPが目指すものは究極的に言えば「なりたい自分になる」ということです。
これだけをとると体のよい自己啓発ツールのように思われますが、NLPの場合は「五感」を意識的にデザインする手法の面で、とてもロジカルで実践的な印象を受けました。

人間は意志の生き物であるとはよく言われますが、実はその意志が自分にとって本質的なものか?ということはあまり理解できていません私たち自身、本当に欲しいものは理解できていないのです。

最初の例でいえば、私たちはハンバーグそのものが欲しいのではなく、「おいしい」「暖かい」「楽しい」といった感覚と、それに付随したイメージを欲しているということなのです。

NLPにより深層心理を意識化し、これらの感覚と未来に向けた意志が統一されることで、よりよい自己実現を生み出す。
このことが「なりたい自分になる」ということではないでしょうか。

とても読みがいがある本ですので、手に取るときは相応の意志が必要ですが、私のようにまず理解したい!という人にもおススメです。

書評:JALの奇跡 (稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの)


『JALの奇跡 (稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの) 』

事業会社としては戦後最大、二兆三千億円の負債を抱えて2010年に倒産したJALは、倒産後京セラ名誉会長の稲盛さんが会長として再建に携わり、現在営業利益率10%以上を誇る高収益企業として生まれ変わりました。
これは負債額よりもむしろその奇跡的な復活劇の方が歴史的な出来事です。
あまりにも早く再建したためか、むしろ若い世代では倒産した事実さえ知らない方もいるようです。

そのJALが、奇跡的復活をわずか1年で遂げ、かつその好業績を今も続けているのはなぜなのか。

この本には、そんな倒産直後から復活までの道のりが、外部から招へいされた著者の視点で描かれています。
著者は日本航空元会長補佐として、外部から会長として乗り込んだ稲盛和夫さんのサポート役を務められた方です。

稲盛和夫さんは言わずと知れた歴史的名経営者で、全世界1万3000人以上の塾生がいる中小企業のための経営塾「盛和塾」を主宰されていることでも知られています。

外部からのコンサルティングなどは一切なく、あくまで内部の改革で成し遂げた奇跡の秘密は、
「ハードではなく人の意識を変える」ということ。そのドラマが生々しく描かれており、読んでいるとその迫力には鳥肌が立つものがあります。

武器として持っていたのは「フィロソフィ」と「アメーバ経営」

「1年で再建したということは、何か特別な優遇があったのではないか?」
これは今でもよく聞かれるということですが、驚くべきことに稲盛さんは専門のコンサルティング会社を断り、「人として何が正しいか」という考え方や熱意=フィロソフィと、アメーバ経営という経営システムの2つをベースとして再建しました。

フィロソフィとは、一般的には哲学という意味ですが、この場合「人としてどう生きるか」を共有できる価値観としてまとめた独特の意味があります。もともとは稲盛さんが研究開発をする中で、心のありようで研究結果が変わることに気づき、それをノートの端などにまとめたものがオリジナルのようです。

アメーバ経営とは、全員参加経営を実現するための会計システムです。組織をできるだけ小さく分け、運営を各部門のリーダーに任せ、その経営数字をオープンにリアルタイムに把握します。
部門ごとに採算表をまとめることで、どの部署が黒字だったのか、どういった経費を使ったのかがすべて把握でき、京セラ成長の原動力になったシステムといわれています。

専門的な知識がない中で、今いる社員の可能性を信じ、見えない部分である考え方や熱意を意識改革し、それを最大限発揮するための経営システムを導入する。
一見するとそれだけで再建が叶うのか信じがたいことですが、この本の中のさまざまなエピソードを読むと、その可能性が実感できます。

意識改革のための、強い意志

著者は意識改革をするために、まずリーダーを育成することが最優先だと判断しました。
当時JALには民間企業を経営しているという意識の幹部はいなかったようですが、リーダーとしての意識を徹底して伝えればわかってくれるはず。
そのためにたった5名の意識改革準備室を開設、土曜日を含めて1か月に16回のリーダー教育を断行。
強引ともいえるスケジュールを進め、終了後には必ず意見交換会(コンパ)を行うという徹底ぶりで、幹部間の一体意識を高めました。
当初は反発も大きかったようですが、進めていく中で意識が大きく変わり、最後の合宿ではエリート社員が朝四時ごろまで熱い議論を交わすようになりました。
本気で進めること、意志を貫徹することの重要性をとても強く感じるエピソードです。
JAL再建の2010年から2011年は民主党政権での混乱、東日本大震災、日中関係の悪化などさまざまな変動があった時期でもあります。
その時であっても、意識改革のプログラムは決してスケジュールを遅らせることなく、進めていったそうです。

部下を同じ目標に向けて引っ張っていくのがリーダー

企業経営でもっとも大切なのはリーダーで、それも能力ではなく人間性が素晴らしいことが重要。

「お前は何を基準に人を見るのだ」と稲盛さんに聞かれた際、著者は
「JALが一番好きで、まじめで一生懸命で、しかも明るい人がリーダーに相応しいと思っています」と答えています。

また、リーダーとマネージャーの違いについても触れています。

「部下を管理するマネジメントについては、あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて同じ目標に向けて引っ張っていけるリーダーを育てることなんだ。優秀なマネージャーであれば、困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。うまくいかなかったら、言い訳を探して、責任逃れをするだろう。そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。再建を成功させるには、どんな困難にぶち当たってもあきらめずにやり遂げようとする、一つの目標に向かって部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、そんなリーダーが必要なんだ」

稀代のリーダー、稲盛和夫さん

78歳という高齢でJALの債権を引き受けた稲盛さんは、当初週3日~4日の出勤という話でしたが、それどころではなく土曜日も出勤することが多くなったそうです。そのような中でも時間を見つけて現場訪問を行ったり、全社員に向けて手紙を出すなど、常に現場に向ける愛情の目を忘れなかったようです。

また、路線の大幅な縮小に伴ってパイロットの業務ができずに地上勤務になった孫くらい年が離れた社員が、稲盛さんに不満を訴えると
「馬鹿かお前は。JALの経営状況がどうなっているかわかっているだろう。」
と真正面から激論を繰り広げるなど、まさに同じ目標に向かって一体になることを目指すリーダー像が描かれています。

この改革に、汎用性があるか

稀代のリーダーとフィロソフィ、そして数字で人間の可能性を追求するアメーバ経営。
これらが合わさって奇跡の復活を遂げたJAL。このストーリーに汎用性はあるのでしょうか。

私はあると考えています。JALほどの規模は難しいかもしれませんが、人間の願望と可能性は無限です。

幹部と現場の意識が乖離し、ひとつの目標に向かってベクトルがあっていない。
経営者の想いを社員が理解できていない。
経営者が社員を信じることができない。

そのような中小企業は残念ながら多くあります。
JALの歴史的な事例が証明するのは、すべてを貫徹する意志と集中力を持てば、どのような状況であっても1年で意識と経営を変革できるということです。

今、働き方改革といわれる中で、仕事の時間は減りつつありますし、今後も減っていくでしょう。

この本の中で描かれている様々なエピソードは、その中でも仕事を通じて人間性を高め、考え方を磨いていくことの大切さを私たちに教えてくれる、歴史的な財産ではないかと思います。

書評:まんがでわかるデザイン思考


『まんがでわかるデザイン思考』

「まんがでわかる」シリーズは個人的にはそれ程手に取って読むことはありませんが、今回はたまたま会社にあったので読んでみました。

結論から言えば「自分がまったく知らないことについて、とにかく早く概要を知りたい。でもWikipediaでは活用イメージがわかない。早く活用したい。」というわがままな企業人にまんがはピッタリです。
逆に、多少でも自分で理解しているテーマであれば、まんがであえて読む必要はないかもしれません。

■「デザイン思考」とはなにか
「デザイン思考」とひとくちに言っても、具体的にはどんなことなのかをイメージしにくい方もいるかもしれません。
ひとことで表現すれば、「デザイン思考とは(破壊的)イノベーションを生み出すための発想から具体化のプロセス」ということができます。

それでは、イノベーションとはどういう意味でしょう。
イノベーションは、「新しいアイデアの実施を通じて、これまでにない価値を創造するということ」だと定義できます。

今常識だと思っていることは、過去には常識ではなかったはずです。どこかで誰かが、その常識を新たに作った。それがイノベーションです。

たとえば、ペットボトルのお茶や水。昔は誰も買う人はいませんでした。AppleのiPhoneなどはイノベーションの代表格ですね。それまでスマートフォンの時代が来るといわれながらまったく普及しませんでしたが、iPhoneの登場により一気にスマホシフトが進みました。

デザイン思考は、そんな一部の人でしか起こせないと考えられているイノベーションを起こすための汎用的な発想・具体化法そのものなのです。

 

■デザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセスは、大きく3つあります。

1)着想
・課題を解決するための問題や機会、潜在的ニーズの発見

2)発案
・アイデアを具体的に発案し、実現性を検証する

3)実現
・アイデアをプロトタイピング(試作)し、市場へと導く

デザイン思考にも大きく3種類くらいの流派があるようで、具体的なプロセスはそれぞれ異なるようです。

しかし、全体を貫いている大きな特徴としては「重要なのは技術ではなく、人間に注目し、潜在的なニーズを見つけ満たすこと」という考え方に立脚している点です。

iPhoneは新しい技術ではなく、あくまで既存の技術の組み合わせ。
ペットボトルのお茶や水も、どちらも既存のものですでに市場にあったものでしょう。
「すべての常識をゼロベースで考え、人間が本当に望んでいるものを考えていく」
デザイン思考は人間そのものを探求するプロセスでもあるのです。

■デザイン思考をどう活かす?
それでは、このデザイン思考はどのように仕事や企画に活かしていけばよいのでしょうか?

いちばんわかりやすいのは新商品開発です。既存の市場に対して新しい価値を提供するのですから、考えやすく成果にもつながりやすいと思われます。

もうひとつ、可能性があると考えられるのは、既存事業の見直しです。これはデザイン思考のプロセスでもとても大切な「課題・テーマの設定」によりますが、歴史のある企業ほど、やり方によっては成果があがりそうです。

デザイン思考は、今の世界は必ずもっとよくできるという立場に立脚します。
例え300年続いている事業であってもイノベーションの余地はあるわけです。
私たちのお客様でも、ずっと続いているが毎年同じことをしていて、少しずつ業績が下がっている、そんなケースが多くあります。
そんな業界の常識を破壊し、まったく新しい発想を生み出していくために、デザイン思考は大きな役割を果たすのではないでしょうか。

私たちの会社でもデザイン思考によるワークショップを行った際は、さまざまなイノベーティブなアイデアが出ました。

実際の現場へ行って顧客として製品やサービスを体験し、同じような人々を観察する「オブザベーション」。何気ない人の動作から、多くの気づきを得ることができます。

紙や粘土を使って、すばやく手を動かしながらビジネスを試作する「プロトタイピング」のプロセスは非常に新鮮で楽しいものです。

そんなデザイン思考のプロセスを進めていくと、大切なのはビジネスモデルやシステムだけではなく「楽しい・うれしい・不満だ」といった、人の感情であることにあらためて気づかされるのです。

デザイン思考というプロセスが普及することで、日本全体のビジネスにもよい変化が生まれるよう、期待しています。


顧客とひとりとなって体験しながら人を観察するオブザベーション


手を動かしながらビジネスを設計するプロトタイピング(施策)

私自身、知識も実践もあくまで鳥羽口に立ったばかりですので、これからも「人間の経験をデザインする」デザイン思考の探求を続けていきます。

書評:意識はいつ生まれるのか – 脳の謎に挑む統合情報理論


『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』

「意識とは何か。どこで生まれるのか」
これは生物もしくは脳を考えるうえで、大きな謎です。そもそもその定義すら曖昧です。

医学的にも、この問い自体は何も生み出さず、経済的な発展性もない(新薬の開発などビジネス的妙味がない)ため、研究すらあまり進んでいないということを、養老孟司さんの本で読んだことがあります。

なぜ脳はなんなく光と闇を見分け得る主体を生み出すことができるのか。
この本は、ロジカルでありながら感覚的でもあり、全体の構成はいくつかのアプローチをらせん状にとりながら、本質に向かっていく形をとっています。

『意識を生み出す基盤は、おびただしい数の異なる状態を区別できる、統合された存在である。
つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある。』

統合情報理論では、意識をこのように定義します。
そして、意識がいったいどこで生まれているのかを探索していきます。

この本を読み終えたとき、定義への理解が深まると同時に、この意識を生んでいるものが、ひとつは人の大脳であり、他の動物にもあるかもしれない、ということがわかります。
反面、他の主体には存在しないということも理解ができます。広大な宇宙やAI、ロボット、ブラックホールでさえも、意識を持ちえないことがわかります。

もちろん、この本の内容で脳と意識の全てが解決されるわけではありません。ここで書かれていることは探索のアプローチであり、新たな研究が生まれてくる可能性も多くあります。
それでも現時点で、意識に関する非常に多くの示唆を与えてくれることは間違いありません。
意識とは内側に存在する広く偉大な宇宙であり、私たちには何ものにも代えられない大きな可能性があるということが、理論と感覚でより深く理解できることでしょう。
人間の特性について興味のある方にはぜひ読んでいただきたい本です。

7.ブランディングのメリット

これまで説明してきたブランディングについて、企業から見てどのようなメリットがあるのか、インナーブランディングの観点を含めてご紹介します。
 
さて、ここで質問。

たとえばあなたが最寄りのスーパーで「ごま油」を買おうと思った時、どれ位の時間で決めているでしょうか。
 
即断即決の人もいれば、ごま油にはかなりこだわりがあって悩むという人もいるでしょう。
 
実際に購入に至るまでの時間は人それぞれですが、認知として人は購買の判断そのものは数秒でしていると言われています。
 
ブランディングのもっとも大きなメリットは「差別化により選ばれやすくなること」です。
 

1.競合商品・サービスとの差別化

また、ブランドに力を入れている企業の代表格であるアップルの「iPhone」は、サムスンやLGなど他のスマートフォンメーカーの製品と比較して価格が高いことでも有名です。
そんな中、日本におけるiPhoneのシェアはなんと70%。これもブランディングのなせる業です。
 
「たしかに安いけれど、なんとなく韓国や台湾メーカーのスマホは不安だな…」
という人は多いのではないでしょうか?
 
2.付加価値の向上と価格決定権
 
ブランディングをすることにより、安心感・信頼感を持っていただくことができます。
結果として、消費者に納得してもらえるもっとも高い価格での販売を実現できるのです。
 
3.法的保護

一見目立たないメリットですが、これもとても大切です。
ブランドとして確立すれば、登録商標、著作権など各種法的保護を受けることができます。
 
 
さて、ここまでは対消費者に向けたブランディングのメリットをお伝えしました。
 
前回お話しした通り、ブランディングとは企業の「こう思われたい」と消費者の「こう思う」を一致させる活動でしたね。
 
これらの「こう思われたい」を伝えるのはあくまでも企業の社員です。
 
今はSNSが浸透し、会社の内部がこれまでよりもとても良く見える時代。
ブランディングにより得られる、社内向けのメリットも大きなポイントになるのです。
 
4.社内の意思統一と社員モチベーションの向上

より差別化されたブランディングは、自社内も変えていきます。「どう思われたいか」を明確にすることにより、社内での一体感を高めることができるのです。
 
自社がブランド価値を発信することにより、その価値に共感する人たちも集まりやすくなるため、以下のメリットも生まれてきます。
 
5.採用活動の効率化
 
私は大企業だけではなく、中小企業にこそブランディングが必要だと考えています。
日本における法人の98%を占め、経済を底支えする中小企業がブランディングをすることにより、新しい価値に共感する人々が大企業にはない生きがいや働き甲斐を見出すことができるのではないでしょうか。
 
以上、消費者向けと社内向けに分けてブランディングのメリットをご説明しました。
この他にも販促予算の削減や、Web広告における指名買いの増加など、さまざまなメリットがあります。
 
単なるデザインやイメージの統一ではない、より深いブランディングの必要性を感じていただけましたでしょうか?
 


<まとめ>
■ブランディングのメリットは対消費者、対社内の2方向がある
■ブランディングにより消費者から選ばれやすくなる、価格決定権が得られるなどのメリットがある
■社内向けには意識の統一や採用活動の効率化という効果が得られる

6.消費者にとってのブランディング

今回は、「ブランディングとは何か?」を消費者の視点からご紹介します。

繰り返しになりますが、消費者にとってブランドとは「識別」されている状態を指します。

ブランディングとは、消費者にどのように「識別」してもらうかを、企業が明確に定義すること。

明確に定義してもらうための「旗」が前回お話ししたブランド・アイデンティティです。
企業側が「どう思って欲しいか」がその中には端的に含まれていなければなりません。

それに対して、消費者が企業を「どう思うか」を「ブランド・イメージ」といいます。

ブランド・イメージは、消費者・顧客のココロ(心象)の中で生まれるということがポイントです。

たとえば「ユニクロ」を思い浮かべるとき、どのような印象が浮かびますでしょうか?
カジュアルファッションや家族のイメージ、またはグローバル企業として先進的な印象もあるかもしれません。

これらのイメージは、ユニクロというブランドが提供する機能的・非機能的要因を私たちが受けることで、形作られています。

ブランディングは、一言で表現してしまえば、企業の「こう思われたい」(ブランド・アイデンティティ)と、消費者の「こう思う」(ブランド・イメージ)を一致させる活動なのです。

そして、そのために第2回の時に触れた「刺激の設計」がとても大切になってきます。

<まとめ>
■消費者が企業のことを「どう思うか」を「ブランド・イメージ」という
■ブランド・イメージはココロの中で形作られる
■ブランディングとは企業の「こう思われたい」と消費者の「こう思う」を一致させる活動

次回は一体ブランディングをすることによってどういうメリットがあるのか?を具体的にご紹介します。

5.ブランディング最初のステップ ブランド・アイデンティティ

前回は、消費者がブランドを認知する際の種類「ブランド再認」と「ブランド再生」についてお話しました。

今回からは、企業がブランディングをするにあたって最も根本的な問いである、ブランディングとは何か?がテーマです。

これまでのお話の中で、ブランドとは識別であること、消費者の「心のイメージ」に対してアプローチしていくことなどに触れてきました。

ブランディングとは、消費者に対して何らかの識別をしてもらうための取組み全般を指しますが、そのためには、「どんな消費者に?」「どのように?」を、企業側が明確に定義する必要があります。

ブランディングをしていくときには、まずどんな消費者に届けたいのかの「旗」を立てます。

それが「ブランド・アイデンティティ」です。

とても大切なポイントですので、ブランド・アイデンティティとは何かは記憶してしまいましょう。

<ブランド・アイデンティティとは>
企業が自社の製品・サービスが競合他社の製品・サービスとどこが違うかを明確に示すもの。
※言い換えれば、企業が消費者・顧客にその製品・サービスを「どう思ってほしいか」のこと。
「消費者・顧客がどう思うか」というのは「消費者・顧客がどこが違うと思うか」ということであるが、購買行動に繋げるためには競合製品・サービスとの差異が消費者・顧客にとって意味あるものである必要がある。
つまり、差別化ポイントはニーズと連結している必要がある。

※ブランド・マネージャー認定協会より抜粋

ブランド・アイデンティティは、できるだけわかりやすく、言葉にして20文字以内で表現でき、社内で共有できることが大切です。
また、下記の問いに応えられるものでなければなりません。


1)競合他社の製品・サービスとどこが違うのか?


2)消費者はだれか?


3)消費者が自社に期待することが入っているか?


4)自社が提供したい価値が含まれているか?

これらを含めて、企業側が消費者に「どう思ってほしいか」=「旗」を定義すること。
ブランディングをしていくときには、これを考えることがはじまりです。

参考までに、有名なブランドアイデンティティの例をご紹介します。

■マクドナルド
Favorite Place and Way to Eat
お客様お気に入りの場所と食べ方を提供する

「ハンバーガー」という言葉は出てきません。
国によって異なるメニューを出したり、子どもがマックのクルー体験ができる「マックアドベンチャー」やカフェを展開するのは「お気に入りの場所と食べ方」を提供していくためだということがわかります。

■スターバックス
Rewarding Everyday Moments
自分へのご褒美としての豊かな時間

「コーヒー」という言葉ではなく、「人」に焦点を当て、
毎日のご褒美の時間を提供することがスターバックスのブランド定義です。
家庭と職場以外の第3の場所を提供していることは有名ですね。

■ナイキ
Authentic Athletic Performance
アスリートに敬意を

ナイキは実際には一般の顧客が多いですが、クオリティは常に
アスリートのニーズを満たすものでなければならないということを表現しています。
CMをはじめとした販促も、アスリートにスポットを当てることで、少年やファンに夢を与えています。

ナイキのブランド・アイデンティティに関連して、一度アップル社を追われたスティーブ・ジョブス氏が1997年に復帰した際、ナイキのブランドについて語ったエピソードをご紹介します。

NIKEは靴を売る会社じゃない、アスリートに敬意を払っているんだ

彼らは靴を売っている。
でもNIKEのことを考える時、ただの靴店よりももっと何か大きなものを感じる。
NIKEは広告では決して製品について話さない。
エアソールについてなんか話さないし、どうしてNIKEのエアソールが、リーボックのエアソールよりもいいのかなんてことは絶対に話にださない。

NIKEの広告にあるものはなんだろう?
NIKEは偉大なアスリートたちを褒め称え、スポーツに敬意を払っている。
それこそが、NIKEがやっていることなんだ。

知名度や品質だけではなく、消費者の心理にアプローチすること、そのためにブランド・アイデンティティがどのような役割を果たしていくのがおわかりいただけましたでしょうか?

ブランディング最初のステップ ブランド・アイデンティティ


<まとめ>
■企業がブランディングをしていくときには「旗」=ブランド・アイデンティティを立てる
■ブランド・アイデンティティは競合・消費者・提供する価値が全て含まれている必要がある

4.消費者はどのようにブランドを認知するのか?

前回は、ブランドイメージを上げるためにどうするのか?というテーマで、刺激の設計に関する話をしました。
 
今回は消費者がどのようにブランドを認知していくのか?がテーマです。
 
ブランドとは、消費者に識別されている状態ですが、その中で、消費者がブランドを認知する方法は2種類あります。
 
例えば、このロゴを見たら、あなたはどのように思いますか?
https://matome.naver.jp/odai/2137410694138210401
 
誰もが知っているロゴマークですね。このマークを見たときに、この会社が何をしているか、かなり想像ができると思います。
 
この認知の仕方が、「ブランド再認」です。
企業が提供するブランド要素の力を借りて、私たち消費者がブランドを思い浮かべるという認知の方法です。
 
もうひとつ、例えば想像してみてください。
 
あなたは一人で街を歩いていて、とても時間がありません。
 
そんな中でお腹が空いてきました。そんなとき、どのようなお店が思い浮かびますか?
 
先ほどと同じブランドかもしれませんし、違うブランドかもしれません。
 
また、もし一人ではなく家族や友人と一緒に歩いているとすれば、また違うブランドを思い浮かべると思います。
 
この「特定のニーズに対して思い浮かべる」という認知の方法が「ブランド再生」です。
ブランド要素の助けを何も借りずに、消費者の心の中での記憶とブランドが結びつくことです。
 
もちろん「ブランド再生」の方が消費者の認知のレベルとしては高いため、企業は消費者の心の中で思い出してもらう、「ブランド再生」を目指していくことが大切です。
 
それでは、このような認知をふまえて、企業はどのような取り組み方をすれば良いでしょうか。
 
「ブランド再認」には刺激の量、「ブランド再生」のためには刺激の質が大切です。

企業が認知をしてもらうためには、ブランド再認のための刺激を提供していきながら、「特定のニーズ」というものを常に意識して、質・量ともに最適な、刺激の設計をしていく必要があるのです。
 
消費者はどのようにブランドを認知するのか。ブランド再認とブランド再生

<まとめ>
■消費者がブランドを認知する方法には「ブランド再認」と「ブランド再生」の2種類がある
■「ブランド再認」を起こすには刺激の量、「ブランド再生」を起こすには刺激の質が大切

3.ブランドイメージを上げるための「刺激の設計」

第2回目の前回は、ブランドイメージについてお話をしました。
今回はブランドイメージを上げるためにどうするのか?についてお話したいと思います。

前回、

・ブランドは消費者の「心象」で創られる
・ブランドにはゼロ、プラス、マイナスがある
・ブランドは消費者に対してプラスのイメージで識別される必要がある

というお話をしました。

この中で「プラスのイメージで識別される」というためにやるべきことが「刺激の設計」です。

さて、ここで質問です。

一人で街を歩いている時に「お腹が空いたな」と思った時に、
どのお店を思い出すでしょうか?

あるいは、家族や友人と街を歩いているときに同じように
「お腹が空いたな」と思った時はどうでしょうか?

おそらく、一人の時とそうでない時、思い出すお店は違うはずです。

これは企業側がそれぞれのターゲットに対して異なる「刺激」を設計しているからです。

例えば牛丼チェーンであっても、「吉野家」はどちらかといえばおひとりさま向け、「すき家」は家族向けというイメージがないでしょうか?

私たちは日ごろ消費者としてどのような刺激を受けているのか、考えてみると新しい発見がありますよ。

なお、この「刺激」には2種類あります。

1)ブランド要素
その商品やサービスを象徴するサインのことです。

・ロゴ
・パッケージ
・色
・ジングル(音楽)
・キャラクター
・匂い
・ドメイン

2)ブランド体験
その商品やサービス体験そのもの、あるいはアフターサービスなどのことです。

ブランドをプラスにするには、適切なブランド要素とブランド体験をしっかりと設計しましょう。

<まとめ>
■ブランドをプラスにするには適切な刺激の設計が必要
■刺激にはブランド要素とブランド体験の2種類がある

2.ブランドにも「プラス」と「マイナス」がある

前回、「ブランド」とはどんな状態?」では

1)ブランドとは消費者起点の概念である
2)ブランドとは「識別」である

というお話をしました。

この中でまず意識していただきたいのは、「消費者が識別しない限りはブランドではない」ということです。

「消費者が識別していない状態」のことを「ブランド・ゼロ」と表現します。

私たちはここから消費者へ訴えかけて、ブランドとして識別してもらえるようにしていく必要があります。
識別してもらうということは、認知されるということでもあります。
つまり、消費者の「心象」、心のイメージに対してアプローチをしていく必要があります。

このために私たちがしなければならないのは「刺激の設計」ですが、それについては次回お話をします。

識別をしてもらうための方法はいくつかありますが、ここで質問です。

昨年ニュースをにぎわせた大手広告代理店の過重労働の件は、覚えている方も多いことと思います。
https://www.huffingtonpost.jp/2017/09/22/dentsu_a_23218906/

このニュースを見たとき、あなたはどのように感じたでしょうか?

「やはり広告代理店は厳しいものだ」
「この会社には入りたくない」

など、様々な印象を持たれたと思いますが、総じてこの企業のサービスに否定的なイメージを持たれた方が多いのではないでしょうか。

ブランドとは識別という話をしましたが、この場合、ブランドマイナスとして識別されているという事になります。

反対に、東日本大震災の時に通信会社の社長が個人として100億円を寄付したことは、おおむね好意的に捉えられたのではないかと思います。
(サイト上で使途が公開されています)
https://www.softbank.jp/donations/?page=list_son.html

この状態は、ブランドプラスであるといえます。

つまり、私たち企業は消費者に識別される必要がありますが、あくまでブランド・プラスとして識別される必要があるということです。

最近では炎上マーケティングなど、ネット上で話題になることだけを狙った手法もありますが、ブランドプラス/マイナスの観点から考えると、危険な手法であるといえます。

<まとめ>
■ブランドは消費者の「心象」で創られる
■ブランドにはゼロ、プラス、マイナスがある
■ブランドは消費者に対してプラスのイメージで識別される必要がある