書評:NLPの実践手法がわかる本


『NLPの実践手法がわかる本』

NLPとは何か?

NLPという言葉を聞いたことがない人もいることでしょう。
NLPとは「神経言語プログラミング」というもので、1970年代にアメリカで生まれた、言語学と心理学を組み合わせた実践手法です。

NLPはNeuro(神経) Linguistic(言語) Programming(プログラム)の略で、「神経」とは「五感」を表し、「五感」は体験が作り出すものとして定義します。

たとえばハンバーグを食べるという体験には「味」「におい」、焼けるときのにおいなどの感覚(五感)が伴うことでしょう。

NLPでは、人間は五感を通じて体験し、それを言語化することによって意味づけをし、行動を仕組化(プログラム化)すると考えます。

NLPが目指すもの

それでは、NLPは何を目指すものでしょうか。
NLPにおいては、人間は五感を通じて行動を仕組化(プログラム化)するということでした。私たちが、その行動の仕組みや反応を意識していなかったら、いったいどうなるでしょうか?

私たちの中には、建設的な影響を与える感覚・反応と、破壊的な影響を与える感覚・反応があります。
しかし、どちらについてもすべてを意識的にできているかといえば、そうではないと思います。

自分がなぜこのような行動をしているのか、わからないことはありませんか?
たとえば仕事でも、後から考えるとどうしてこんなことを疎かにしたんだろう、というトラブルがあります。
プライベートの日常でも、余計な一言や行動で、人を不快にさせることもあるでしょう。
ダイエット、禁酒、禁煙、生活習慣。
理屈ではわかっていても、なぜか続かない。そんな人も多いことと思います。

プログラムの特徴は、「刺激に対して反応する」ということです。

NLPが目指すものは、こういった人が普段意識していない五感と言語を意識化することで、脳内の破壊的なプログラムを排除し、よりよいコミュニケーションや人生を実現することなのです。

この本で得られるもの

「NLPの実践手法がわかる本」は、実践編ではありますが序盤にかなりNLPの概念的な説明がありますので、これ一冊でも基本的な理解が深まります。
ただし、中身は相応に濃いため、一読して理解できるというものでもない印象です。

その中でも実践手法の中で重要なスキルとなる「アソシエイト」と「ディソシエイト」については反芻・実践が必要だと感じました。

1)アソシエイト
自分の体験をまさに自分事として、身体全体で深く体験すること。
→好ましいプログラムを作るときに重要になる

2)ディソシエイト
自分の体験をまるで他人事のように観察すること。
→否定的なプログラムを解除するときに重要になる

NLPではこの2つの概念を行き来することで、自分の中の無意識を意識化し、変革していきます。とくに後半はかなり高度な内容になりますので、しっかりと時間を取って復習・実践をした方がよいかもしれません。

私個人としてはまず概念的な理解をしたかったため、後半の実践はそれ程できていませんが、内容には十分満足できました。

なりたい自分になる、ということ

NLPが目指すものは究極的に言えば「なりたい自分になる」ということです。
これだけをとると体のよい自己啓発ツールのように思われますが、NLPの場合は「五感」を意識的にデザインする手法の面で、とてもロジカルで実践的な印象を受けました。

人間は意志の生き物であるとはよく言われますが、実はその意志が自分にとって本質的なものか?ということはあまり理解できていません私たち自身、本当に欲しいものは理解できていないのです。

最初の例でいえば、私たちはハンバーグそのものが欲しいのではなく、「おいしい」「暖かい」「楽しい」といった感覚と、それに付随したイメージを欲しているということなのです。

NLPにより深層心理を意識化し、これらの感覚と未来に向けた意志が統一されることで、よりよい自己実現を生み出す。
このことが「なりたい自分になる」ということではないでしょうか。

とても読みがいがある本ですので、手に取るときは相応の意志が必要ですが、私のようにまず理解したい!という人にもおススメです。

書評:JALの奇跡 (稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの)


『JALの奇跡 (稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの) 』

事業会社としては戦後最大、二兆三千億円の負債を抱えて2010年に倒産したJALは、倒産後京セラ名誉会長の稲盛さんが会長として再建に携わり、現在営業利益率10%以上を誇る高収益企業として生まれ変わりました。
これは負債額よりもむしろその奇跡的な復活劇の方が歴史的な出来事です。
あまりにも早く再建したためか、むしろ若い世代では倒産した事実さえ知らない方もいるようです。

そのJALが、奇跡的復活をわずか1年で遂げ、かつその好業績を今も続けているのはなぜなのか。

この本には、そんな倒産直後から復活までの道のりが、外部から招へいされた著者の視点で描かれています。
著者は日本航空元会長補佐として、外部から会長として乗り込んだ稲盛和夫さんのサポート役を務められた方です。

稲盛和夫さんは言わずと知れた歴史的名経営者で、全世界1万3000人以上の塾生がいる中小企業のための経営塾「盛和塾」を主宰されていることでも知られています。

外部からのコンサルティングなどは一切なく、あくまで内部の改革で成し遂げた奇跡の秘密は、
「ハードではなく人の意識を変える」ということ。そのドラマが生々しく描かれており、読んでいるとその迫力には鳥肌が立つものがあります。

武器として持っていたのは「フィロソフィ」と「アメーバ経営」

「1年で再建したということは、何か特別な優遇があったのではないか?」
これは今でもよく聞かれるということですが、驚くべきことに稲盛さんは専門のコンサルティング会社を断り、「人として何が正しいか」という考え方や熱意=フィロソフィと、アメーバ経営という経営システムの2つをベースとして再建しました。

フィロソフィとは、一般的には哲学という意味ですが、この場合「人としてどう生きるか」を共有できる価値観としてまとめた独特の意味があります。もともとは稲盛さんが研究開発をする中で、心のありようで研究結果が変わることに気づき、それをノートの端などにまとめたものがオリジナルのようです。

アメーバ経営とは、全員参加経営を実現するための会計システムです。組織をできるだけ小さく分け、運営を各部門のリーダーに任せ、その経営数字をオープンにリアルタイムに把握します。
部門ごとに採算表をまとめることで、どの部署が黒字だったのか、どういった経費を使ったのかがすべて把握でき、京セラ成長の原動力になったシステムといわれています。

専門的な知識がない中で、今いる社員の可能性を信じ、見えない部分である考え方や熱意を意識改革し、それを最大限発揮するための経営システムを導入する。
一見するとそれだけで再建が叶うのか信じがたいことですが、この本の中のさまざまなエピソードを読むと、その可能性が実感できます。

意識改革のための、強い意志

著者は意識改革をするために、まずリーダーを育成することが最優先だと判断しました。
当時JALには民間企業を経営しているという意識の幹部はいなかったようですが、リーダーとしての意識を徹底して伝えればわかってくれるはず。
そのためにたった5名の意識改革準備室を開設、土曜日を含めて1か月に16回のリーダー教育を断行。
強引ともいえるスケジュールを進め、終了後には必ず意見交換会(コンパ)を行うという徹底ぶりで、幹部間の一体意識を高めました。
当初は反発も大きかったようですが、進めていく中で意識が大きく変わり、最後の合宿ではエリート社員が朝四時ごろまで熱い議論を交わすようになりました。
本気で進めること、意志を貫徹することの重要性をとても強く感じるエピソードです。
JAL再建の2010年から2011年は民主党政権での混乱、東日本大震災、日中関係の悪化などさまざまな変動があった時期でもあります。
その時であっても、意識改革のプログラムは決してスケジュールを遅らせることなく、進めていったそうです。

部下を同じ目標に向けて引っ張っていくのがリーダー

企業経営でもっとも大切なのはリーダーで、それも能力ではなく人間性が素晴らしいことが重要。

「お前は何を基準に人を見るのだ」と稲盛さんに聞かれた際、著者は
「JALが一番好きで、まじめで一生懸命で、しかも明るい人がリーダーに相応しいと思っています」と答えています。

また、リーダーとマネージャーの違いについても触れています。

「部下を管理するマネジメントについては、あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて同じ目標に向けて引っ張っていけるリーダーを育てることなんだ。優秀なマネージャーであれば、困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。うまくいかなかったら、言い訳を探して、責任逃れをするだろう。そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。再建を成功させるには、どんな困難にぶち当たってもあきらめずにやり遂げようとする、一つの目標に向かって部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、そんなリーダーが必要なんだ」

稀代のリーダー、稲盛和夫さん

78歳という高齢でJALの債権を引き受けた稲盛さんは、当初週3日~4日の出勤という話でしたが、それどころではなく土曜日も出勤することが多くなったそうです。そのような中でも時間を見つけて現場訪問を行ったり、全社員に向けて手紙を出すなど、常に現場に向ける愛情の目を忘れなかったようです。

また、路線の大幅な縮小に伴ってパイロットの業務ができずに地上勤務になった孫くらい年が離れた社員が、稲盛さんに不満を訴えると
「馬鹿かお前は。JALの経営状況がどうなっているかわかっているだろう。」
と真正面から激論を繰り広げるなど、まさに同じ目標に向かって一体になることを目指すリーダー像が描かれています。

この改革に、汎用性があるか

稀代のリーダーとフィロソフィ、そして数字で人間の可能性を追求するアメーバ経営。
これらが合わさって奇跡の復活を遂げたJAL。このストーリーに汎用性はあるのでしょうか。

私はあると考えています。JALほどの規模は難しいかもしれませんが、人間の願望と可能性は無限です。

幹部と現場の意識が乖離し、ひとつの目標に向かってベクトルがあっていない。
経営者の想いを社員が理解できていない。
経営者が社員を信じることができない。

そのような中小企業は残念ながら多くあります。
JALの歴史的な事例が証明するのは、すべてを貫徹する意志と集中力を持てば、どのような状況であっても1年で意識と経営を変革できるということです。

今、働き方改革といわれる中で、仕事の時間は減りつつありますし、今後も減っていくでしょう。

この本の中で描かれている様々なエピソードは、その中でも仕事を通じて人間性を高め、考え方を磨いていくことの大切さを私たちに教えてくれる、歴史的な財産ではないかと思います。

書評:まんがでわかるデザイン思考


『まんがでわかるデザイン思考』

「まんがでわかる」シリーズは個人的にはそれ程手に取って読むことはありませんが、今回はたまたま会社にあったので読んでみました。

結論から言えば「自分がまったく知らないことについて、とにかく早く概要を知りたい。でもWikipediaでは活用イメージがわかない。早く活用したい。」というわがままな企業人にまんがはピッタリです。
逆に、多少でも自分で理解しているテーマであれば、まんがであえて読む必要はないかもしれません。

■「デザイン思考」とはなにか
「デザイン思考」とひとくちに言っても、具体的にはどんなことなのかをイメージしにくい方もいるかもしれません。
ひとことで表現すれば、「デザイン思考とは(破壊的)イノベーションを生み出すための発想から具体化のプロセス」ということができます。

それでは、イノベーションとはどういう意味でしょう。
イノベーションは、「新しいアイデアの実施を通じて、これまでにない価値を創造するということ」だと定義できます。

今常識だと思っていることは、過去には常識ではなかったはずです。どこかで誰かが、その常識を新たに作った。それがイノベーションです。

たとえば、ペットボトルのお茶や水。昔は誰も買う人はいませんでした。AppleのiPhoneなどはイノベーションの代表格ですね。それまでスマートフォンの時代が来るといわれながらまったく普及しませんでしたが、iPhoneの登場により一気にスマホシフトが進みました。

デザイン思考は、そんな一部の人でしか起こせないと考えられているイノベーションを起こすための汎用的な発想・具体化法そのものなのです。

 

■デザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセスは、大きく3つあります。

1)着想
・課題を解決するための問題や機会、潜在的ニーズの発見

2)発案
・アイデアを具体的に発案し、実現性を検証する

3)実現
・アイデアをプロトタイピング(試作)し、市場へと導く

デザイン思考にも大きく3種類くらいの流派があるようで、具体的なプロセスはそれぞれ異なるようです。

しかし、全体を貫いている大きな特徴としては「重要なのは技術ではなく、人間に注目し、潜在的なニーズを見つけ満たすこと」という考え方に立脚している点です。

iPhoneは新しい技術ではなく、あくまで既存の技術の組み合わせ。
ペットボトルのお茶や水も、どちらも既存のものですでに市場にあったものでしょう。
「すべての常識をゼロベースで考え、人間が本当に望んでいるものを考えていく」
デザイン思考は人間そのものを探求するプロセスでもあるのです。

■デザイン思考をどう活かす?
それでは、このデザイン思考はどのように仕事や企画に活かしていけばよいのでしょうか?

いちばんわかりやすいのは新商品開発です。既存の市場に対して新しい価値を提供するのですから、考えやすく成果にもつながりやすいと思われます。

もうひとつ、可能性があると考えられるのは、既存事業の見直しです。これはデザイン思考のプロセスでもとても大切な「課題・テーマの設定」によりますが、歴史のある企業ほど、やり方によっては成果があがりそうです。

デザイン思考は、今の世界は必ずもっとよくできるという立場に立脚します。
例え300年続いている事業であってもイノベーションの余地はあるわけです。
私たちのお客様でも、ずっと続いているが毎年同じことをしていて、少しずつ業績が下がっている、そんなケースが多くあります。
そんな業界の常識を破壊し、まったく新しい発想を生み出していくために、デザイン思考は大きな役割を果たすのではないでしょうか。

私たちの会社でもデザイン思考によるワークショップを行った際は、さまざまなイノベーティブなアイデアが出ました。

実際の現場へ行って顧客として製品やサービスを体験し、同じような人々を観察する「オブザベーション」。何気ない人の動作から、多くの気づきを得ることができます。

紙や粘土を使って、すばやく手を動かしながらビジネスを試作する「プロトタイピング」のプロセスは非常に新鮮で楽しいものです。

そんなデザイン思考のプロセスを進めていくと、大切なのはビジネスモデルやシステムだけではなく「楽しい・うれしい・不満だ」といった、人の感情であることにあらためて気づかされるのです。

デザイン思考というプロセスが普及することで、日本全体のビジネスにもよい変化が生まれるよう、期待しています。


顧客とひとりとなって体験しながら人を観察するオブザベーション


手を動かしながらビジネスを設計するプロトタイピング(施策)

私自身、知識も実践もあくまで鳥羽口に立ったばかりですので、これからも「人間の経験をデザインする」デザイン思考の探求を続けていきます。

書評:意識はいつ生まれるのか – 脳の謎に挑む統合情報理論


『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』

「意識とは何か。どこで生まれるのか」
これは生物もしくは脳を考えるうえで、大きな謎です。そもそもその定義すら曖昧です。

医学的にも、この問い自体は何も生み出さず、経済的な発展性もない(新薬の開発などビジネス的妙味がない)ため、研究すらあまり進んでいないということを、養老孟司さんの本で読んだことがあります。

なぜ脳はなんなく光と闇を見分け得る主体を生み出すことができるのか。
この本は、ロジカルでありながら感覚的でもあり、全体の構成はいくつかのアプローチをらせん状にとりながら、本質に向かっていく形をとっています。

『意識を生み出す基盤は、おびただしい数の異なる状態を区別できる、統合された存在である。
つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある。』

統合情報理論では、意識をこのように定義します。
そして、意識がいったいどこで生まれているのかを探索していきます。

この本を読み終えたとき、定義への理解が深まると同時に、この意識を生んでいるものが、ひとつは人の大脳であり、他の動物にもあるかもしれない、ということがわかります。
反面、他の主体には存在しないということも理解ができます。広大な宇宙やAI、ロボット、ブラックホールでさえも、意識を持ちえないことがわかります。

もちろん、この本の内容で脳と意識の全てが解決されるわけではありません。ここで書かれていることは探索のアプローチであり、新たな研究が生まれてくる可能性も多くあります。
それでも現時点で、意識に関する非常に多くの示唆を与えてくれることは間違いありません。
意識とは内側に存在する広く偉大な宇宙であり、私たちには何ものにも代えられない大きな可能性があるということが、理論と感覚でより深く理解できることでしょう。
人間の特性について興味のある方にはぜひ読んでいただきたい本です。

書評:デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール


デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール(MarkeZine BOOKS)

「ブランディング」は現在のトレンドワードです。実際にGoogleトレンドで見ると、紆余曲折はありながらもここ1~2年で伸びていることがわかります。

しかし、中小企業向けの具体的なブランド戦略はあまり触れられておらず、どうしても大企業向けの理念やCIが中心となってしまうことが多いようです。私たちが中小企業向けに特化して「ブランド戦略検討会」を行っている理由もここにあります。

今回のこの本は、著者のさまざまな経験がとてもわかりやすくまとめられており、CIや理念の重要性を認めつつも、具体的なブランド戦略の実行と運用に力点を置いている点でとても共感できる内容でした。

とくに中小企業が軽視しがちになってしまう「顧客体験」において、一貫してわかりやすい説明がなされており、これまでのブランディング書籍にはなかった敷居の低さがあります。

「デジタル時代の」とあえてタイトルについている通り、スマホやSNSが発達しているからこそ、中小企業が顧客体験全体を最適化できる時代になりました。ブランド戦略として集中投資の効果も大きく見込むことができます。
この点についても概略ながら具体的にまとめていますので、現在オウンドメディアを運用、もしくは検討している方には参考になります。

また、運用時に注意すべき組織の壁、戦略を中期的に固定化する点など、具体的な課題へもアプローチしています。
実際に関わっている私としてもあらためて気を付けたいポイントです。

1点課題を挙げるとすると、顧客のインサイト(ホンネ)の導き出し方については、この本では具体的に触れられていませんでした。

インサイトの掘り出しは、私も検討会をしている中で非常に課題を感じています。デジタル社会になったからこそ顧客が多様化し、「なぜ自社が選ばれているのか?」顧客が見えなくなっている企業が多くあります。
それらのホンネはネットアンケートなどではなかなか見えません。
最終的には現場に行って毎日のように顧客を見つめ続け、判断することでようやく解決につながることもあります。
具体的な顧客体験を導き出すための、インサイトの掘り出しについては他の書籍を当たった方がよいかと思います。

とはいえ、中小企業向けにここまでわかりやすくブランドの知覚価値や顧客体験に触れている本は稀です。
読みやすさもありますので、企業規模や職務に関わらず、マーケティングに携わる方にはご一読をすすめたい内容です。

書評:10年後の仕事図鑑


10年後の仕事図鑑

この本に書かれていることは仕事についてではなく、内容そのものは図鑑のように網羅的でもありません。
また、10年後といいながら、未来がどうなるかということも、最終的には特に描かれてはいません。

この本には、「生き方」をどう選択するかということが書かれています。
今の継続が未来であり、日々の判断をどのようにしていくか。
その選択肢を、とてもわかりやすい形で提供しています。

この本でも書かれている通り、インターネットはたった10年で仕組みを根本から変えました。次の10年で何が起こるかは誰にも予測できません。

ただ、私個人としても非常に感じることですが、貨幣の価値というものが人の信用と強くリンクする社会になりつつあることは間違いありません。信用さえあれば、そこから様々な方法で新たな資産を築き上げていくことができます。金銭というものは自己実現のための手段に過ぎないという、本来あるべき価値観に近づきつつあります。

それは企業活動としても同様です。
企業目標の実現のため、一企業人としてだけではなく、一人ひとりのパーソナルブランディングが非常に大切になってくるであろうことが予想されます。

企業の中でただ漫然と仕事をするのではなく、外に向けての付加価値をいかに創出していくか。フリーランスや起業家だけではなく、企業人にとっても大変参考になる視座を得られる内容です。