書評:意識はいつ生まれるのか – 脳の謎に挑む統合情報理論


『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』

「意識とは何か。どこで生まれるのか」
これは生物もしくは脳を考えるうえで、大きな謎です。そもそもその定義すら曖昧です。

医学的にも、この問い自体は何も生み出さず、経済的な発展性もない(新薬の開発などビジネス的妙味がない)ため、研究すらあまり進んでいないということを、養老孟司さんの本で読んだことがあります。

なぜ脳はなんなく光と闇を見分け得る主体を生み出すことができるのか。
この本は、ロジカルでありながら感覚的でもあり、全体の構成はいくつかのアプローチをらせん状にとりながら、本質に向かっていく形をとっています。

『意識を生み出す基盤は、おびただしい数の異なる状態を区別できる、統合された存在である。
つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある。』

統合情報理論では、意識をこのように定義します。
そして、意識がいったいどこで生まれているのかを探索していきます。

この本を読み終えたとき、定義への理解が深まると同時に、この意識を生んでいるものが、ひとつは人の大脳であり、他の動物にもあるかもしれない、ということがわかります。
反面、他の主体には存在しないということも理解ができます。広大な宇宙やAI、ロボット、ブラックホールでさえも、意識を持ちえないことがわかります。

もちろん、この本の内容で脳と意識の全てが解決されるわけではありません。ここで書かれていることは探索のアプローチであり、新たな研究が生まれてくる可能性も多くあります。
それでも現時点で、意識に関する非常に多くの示唆を与えてくれることは間違いありません。
意識とは内側に存在する広く偉大な宇宙であり、私たちには何ものにも代えられない大きな可能性があるということが、理論と感覚でより深く理解できることでしょう。
人間の特性について興味のある方にはぜひ読んでいただきたい本です。

書評:デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール


デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール(MarkeZine BOOKS)

「ブランディング」は現在のトレンドワードです。実際にGoogleトレンドで見ると、紆余曲折はありながらもここ1~2年で伸びていることがわかります。

しかし、中小企業向けの具体的なブランド戦略はあまり触れられておらず、どうしても大企業向けの理念やCIが中心となってしまうことが多いようです。私たちが中小企業向けに特化して「ブランド戦略検討会」を行っている理由もここにあります。

今回のこの本は、著者のさまざまな経験がとてもわかりやすくまとめられており、CIや理念の重要性を認めつつも、具体的なブランド戦略の実行と運用に力点を置いている点でとても共感できる内容でした。

とくに中小企業が軽視しがちになってしまう「顧客体験」において、一貫してわかりやすい説明がなされており、これまでのブランディング書籍にはなかった敷居の低さがあります。

「デジタル時代の」とあえてタイトルについている通り、スマホやSNSが発達しているからこそ、中小企業が顧客体験全体を最適化できる時代になりました。ブランド戦略として集中投資の効果も大きく見込むことができます。
この点についても概略ながら具体的にまとめていますので、現在オウンドメディアを運用、もしくは検討している方には参考になります。

また、運用時に注意すべき組織の壁、戦略を中期的に固定化する点など、具体的な課題へもアプローチしています。
実際に関わっている私としてもあらためて気を付けたいポイントです。

1点課題を挙げるとすると、顧客のインサイト(ホンネ)の導き出し方については、この本では具体的に触れられていませんでした。

インサイトの掘り出しは、私も検討会をしている中で非常に課題を感じています。デジタル社会になったからこそ顧客が多様化し、「なぜ自社が選ばれているのか?」顧客が見えなくなっている企業が多くあります。
それらのホンネはネットアンケートなどではなかなか見えません。
最終的には現場に行って毎日のように顧客を見つめ続け、判断することでようやく解決につながることもあります。
具体的な顧客体験を導き出すための、インサイトの掘り出しについては他の書籍を当たった方がよいかと思います。

とはいえ、中小企業向けにここまでわかりやすくブランドの知覚価値や顧客体験に触れている本は稀です。
読みやすさもありますので、企業規模や職務に関わらず、マーケティングに携わる方にはご一読をすすめたい内容です。

書評:10年後の仕事図鑑


10年後の仕事図鑑

この本に書かれていることは仕事についてではなく、内容そのものは図鑑のように網羅的でもありません。
また、10年後といいながら、未来がどうなるかということも、最終的には特に描かれてはいません。

この本には、「生き方」をどう選択するかということが書かれています。
今の継続が未来であり、日々の判断をどのようにしていくか。
その選択肢を、とてもわかりやすい形で提供しています。

この本でも書かれている通り、インターネットはたった10年で仕組みを根本から変えました。次の10年で何が起こるかは誰にも予測できません。

ただ、私個人としても非常に感じることですが、貨幣の価値というものが人の信用と強くリンクする社会になりつつあることは間違いありません。信用さえあれば、そこから様々な方法で新たな資産を築き上げていくことができます。金銭というものは自己実現のための手段に過ぎないという、本来あるべき価値観に近づきつつあります。

それは企業活動としても同様です。
企業目標の実現のため、一企業人としてだけではなく、一人ひとりのパーソナルブランディングが非常に大切になってくるであろうことが予想されます。

企業の中でただ漫然と仕事をするのではなく、外に向けての付加価値をいかに創出していくか。フリーランスや起業家だけではなく、企業人にとっても大変参考になる視座を得られる内容です。